受動喫煙のリスクは?喫煙ブースで快適な環境づくりを
近年、改正健康増進法でのルール規定や健康意識の高まりにより、各企業で受動喫煙を防ぐための対策が講じられています。快適な環境をつくるには、受動喫煙がもたらすリスクを理解しておくことが大切です。
そこで今回は、受動喫煙の概要を踏まえつつ、想定されるリスクや加熱式タバコの有害性、リスク回避につながる喫煙ブースの性能などについて解説します。
そもそも受動喫煙とは
受動喫煙(二次喫煙)とは、喫煙者の周りにいる人たちがタバコの煙を吸ってしまうことです。本人の意思とは関係なく他人が出したタバコの煙を吸わされることから、「不随意喫煙」「強制喫煙」などと呼ばれることもあります。
受動喫煙の対策を学ぶにあたり押さえておくべきことは、煙の種類です。タバコの煙は、特性の違いから以下の3種類に分類されます。
・主流煙:喫煙者がタバコの吸い口から直接吸い込む煙
・副流煙:タバコの火がついた先端部分から立ちのぼる煙
・呼出煙:喫煙者が口や鼻から吐き出した煙
上記のうち空気中へと排出される副流煙と呼出煙は、2つ合わせて「環境中タバコ煙」と呼ばれています。受動喫煙を防ぐためには、非喫煙者が環境中タバコ煙にさらされないことが必須条件です。
◇三次喫煙もある
タバコを消したあとに残る化学物質を吸入してしまうことを「三次喫煙」あるいは「残留受動喫煙」や「サードハンド・スモーク」といいます。
その場に喫煙者がいなくても、ヘビースモーカーの車や新幹線の喫煙車両に乗った際にタバコ臭さを感じた経験がある方は多いでしょう。タバコの煙に含まれる化学物質は、火を消したあとも家具・自動車の内装・エアコンなどの表面に付着して残留します。残留した物質はやがてゆっくりと揮発して空気中に再遊離するため、タバコの煙が漂っていない状況でも受動喫煙のリスクは存在するのです。
したがって、受動喫煙の対策をする際は、直接立ちのぼる煙による二次喫煙だけでなく「三次喫煙」のリスクも踏まえて取り組まなければなりません。
受動喫煙のリスクは
近年推進されている受動喫煙の防止策には、病気や成長阻害といった健康被害を防ぐ目的があります。他人のタバコの煙を吸わされると、非喫煙者も喫煙者と同じリスクにさらされてしまいます。
ここからは、受動喫煙のリスクを具体的に見ていきましょう。
◇3大有害物質
タバコの煙には5,300種類以上もの化学物質が含まれていて、そのうち200種類以上は有害物質です。特に以下の3種類は「3大有害物質」と呼ばれており、健康に重大なリスクをもたらします。
・ニコチン
・タール
・一酸化炭素
ニコチンは、血管を収縮させる作用によって血液の流れを悪化させます。依存性が強いことも特徴で、タバコを吸うほどニコチン依存症に陥りやすくなるため、禁煙に失敗する最大の理由といえるでしょう。
タールは、いわゆる「タバコのヤニ」に該当する有害物質です。ベンゾ[a]ピレンや芳香族アミン類など、70種類以上の発がん性物質を含んでいます。
そして、一酸化炭素は、血液中に含まれるヘモグロビンと結びつき、酸素の運搬機能を阻害することで酸素欠乏状態を引き起こす有害物質です。
これらの3大有害物質は喫煙者が吸い込む主流煙より、タバコの先端部分から出る副流煙に数倍多く含まれています。つまり、誰かがタバコを吸った場合、喫煙者の周りにいる人(非喫煙者)のほうが強力な毒を取り込んでしまうため、受動喫煙が大きな問題となっているのです。
◇身体への悪影響
タバコの副流煙には先述した「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」をはじめ、数多くの有害物質が含まれています。そのため、継続的に受動喫煙をしていると、身体にさまざまな悪影響が生じます。
例えば、ニコチンの代謝物やタールは多くの発がん性物質を含んでいるため、身体に取り込むと肺がんや舌がんを発症する可能性が高まります。特に肺がんとの関連性は深く、日常的に受動喫煙が続いている場合、発症リスクが1.3倍ほど上昇するといわれているほどです。
また、タバコの煙には血液の流れを悪くしたり、血圧を上昇させたりする有害物質も含まれており、これらは動脈硬化の原因となります。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞、脳卒中、狭心症といった死に至る病気を引き起こしかねないため、注意しなければなりません。
さらに、受動喫煙が続くと、肺炎や気管支炎といった呼吸器疾患、虫歯や歯周病といった口腔内疾患などの発症リスクも高まります。その他、肌荒れやシミといった外見面の悪影響も無視できません。
◇妊婦や子供への影響は?
妊婦の場合、副流煙を吸い込むと本人だけではなく、お腹の子供にも悪影響が生じます。流産や死産のリスクに加えて、低出生体重児や発育・発達障害のリスクも上昇するといわれているため、周囲の配慮が欠かせません。
また、受動喫煙は成長期にある子供への悪影響も大きいといわれています。成長段階の子供が副流煙にさらされた場合、虫歯、肺炎、気管支喘息などのリスクが高まります。さらに、乳幼児の場合、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが4.7倍も上昇するというデータも存在します。ほかにも、以下のようにさまざまな健康リスクがあると認識しておくことが必要です。
● 自然流産:1.1~2.2倍
● 低体重出生:1.2~1.6倍
● 虫歯:2倍
● 肺炎・気管支炎:1.5~2.5倍
● 気管支喘息:1.5倍
● せき・たん・喘鳴:1.5倍
● 中耳炎:1.2~1.6倍
● 全身麻酔でのトラブル:1.8倍
● 呼吸機能:1秒量低下
● 知能:IQ 5%低下
特に子供は自分の意志で受動喫煙を避けることが困難です。深刻な健康被害を引き起こさないためにも、妊婦や子供の近くでタバコを吸うことは控えるべきでしょう。
受動喫煙に関するQ&A
受動喫煙対策においては、喫煙場所や対策方法に関する誤解も少なくありません。受動喫煙に関してよくある質問をQ&Aにまとめましたので参考にしてください。
◇ベランダで吸えば大丈夫?
ベランダは室外だから問題ないと考えているケースは多いでしょう。しかし、ベランダで吸ったとしても受動喫煙のリスクがゼロになるわけではありません。
タバコの粒子はわずかなサッシの隙間などからも室内へ侵入するため、受動喫煙につながる可能性は大いにあります。また、室内に戻ってからも、喫煙後45分間は有害物質が喫煙者の口から吐き出されるという実験結果も報告されており安心できません。
さらに、集合住宅などでは隣室や上の階などにタバコの煙が流れ込み、自室だけでなく周囲へ影響が出ることもわかっています。住人へ健康被害が出てトラブルになる恐れもあるため十分注意が必要です。
◇換気扇の下で吸えばリスクはない?
ベランダでのケース同様に、換気扇の下で吸えば問題ないという誤解も少なくありません。換気扇によって煙が室外に排出されたとしても、タバコの有害物質は室内に残留するため残留受動喫煙のリスクがあります。「換気扇を回しているのに料理の匂いは部屋に残っている」というシチュエーションを思い浮かべてみるとわかりやすいでしょう。
実際に、喫煙する家族がいる家庭の子供の尿からは、タバコを吸わない家庭に比べてタバコ由来の成分が多量に検出されたという研究結果が報告されています。室内で吸っている場合、成分濃度は禁煙家庭の15倍、換気扇の下で吸った場合でも10倍以上の濃度で検出されており、換気扇の効果は極めて薄いといわざるを得ません。
また、換気扇に吸い込まれたタバコの煙は当然室外へ排出されるので、ベランダでの喫煙と同様に隣家に影響が出る可能性があります。その点も忘れないようにしましょう。
◇家庭用空気清浄機があれば受動喫煙対策になる?
厚労省では、「屋外への排気装置などが備わっていない場合、家庭用の空気清浄機だけで受動喫煙の防止策を実施するのは避けること」というガイドラインを公表しています。
受動喫煙の対策としては喫煙ブースを用いることなどを検討し、空気清浄機に完全に頼らないよう留意しておく必要があるでしょう。
◇加熱式タバコならリスクはない?
「加熱式タバコ」とは、タバコの葉に熱を加え、発生させたエアロゾル(蒸気)を吸い込む仕組みのタバコのことです。従来の紙巻タバコと異なり、直接火をつけて燃焼させないので、そもそも副流煙が発生しません。そのため、有害物質が少ないと宣伝している企業もあります。
しかし、副流煙が出ないといっても、呼出されるエアロゾルにはニコチンなどの有害成分が含まれているので、受動喫煙が起こらないわけではありません。
さらに、加熱式タバコは登場して間もないこともあり、科学的な知見が十分とはいえない状況です。受動喫煙のリスクを断定できない現時点では、紙巻タバコと同様に扱うのが無難でしょう。
また、アメリカでは加熱式タバコが原因と疑われる肺疾患など、健康被害の症例報告が上がっています。いまだに健康へのリスクは実証されていない点が多いものの、先述の報告を踏まえると、加熱式タバコにも十分に注意が必要といえます。
受動喫煙への対策
望まない受動喫煙を防ぐために、日本では2020年4月1日から改正健康増進法が施行されました。この法改正により、喫煙可否や喫煙スペースの設置基準といったルールが明確化され、企業でも受動喫煙の対策に取り組みやすくなりました。
◇事業者は助成金の活用も検討を
受動喫煙防止のために施設設備の整備を行なう事業者は、申請により自治体や公社などから助成金を得られる場合があります。
たとえば、大阪府では令和5年度より全面禁煙化にかかる補助金の上限を20万円から100万円となっております。助成対象となる事業者は、以下の全ての項目に該当する必要があります。
補助対象となる事業者の要件
1. 大阪府内で令和2年4月1日以前から継続して営業している飲食店である
2. 個人経営または中小企業経営(資本金等5,000万円以下)である
3. 補助対象とする飲食店の客席面積が100平米以下である
ただし、従業員を雇用しない客席面積が30平米以下の飲食店は除く
※国助成金の対象となるものは、府補助制度を申請する前に国助成制度の交付決定を受ける必要があります。
これ以外にもさまざまな条件があるため、募集要項をよく読んで申請することが大切です。大阪府では補助金の相談窓口を設置しておりますので、詳しくはそちらをご確認ください。
参考:大阪府/大阪府受動喫煙防止対策補助制度
法改正により全国的に受動喫煙対策が推進されるなか、事業主には従業員の健康リスクや快適な職場環境を整えることが求められています。該当施設の事業主の方はぜひ助成金の活用を検討してみてください。
受動喫煙のリスクを考慮し喫煙ブースを設置しよう
企業で喫煙スペースを設置する場合、新たに部屋を確保したうえで、タバコの煙が漏れ出ないよう天井や壁を区画する必要がありますし、部屋が汚れてくると風速要件をクリアできなくなることもあります。そのため、大規模な工事や部屋が汚れるたびに手直しを行なうケースも多く、費用や時間がかかりがちでした。
そこで推奨したいのが、比較的設置しやすい「喫煙ブース」を利用する方法です。喫煙ブースはオフィスの空きスペースに後付けで設置できるので、空室の確保や区画工事は必要ありません。また、従来の喫煙スペースのように扉で隔てずに分煙できるので、社内コミュニケーションの促進にもつながります。
クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースなら、改正健康増進法をすでにクリアしており、法律要件を満たしている旨を証明するレポート作成もスタッフが代行するので手間が省けます。喫煙ブースを設置する場合、100V電源と空きスペースがあれば設置でき、高性能フィルターと優れた浄化機能により、捕集困難なタバコ粒子や嫌なニオイを除去することが可能です。
詳しくはこちら
まとめ
社内に喫煙者がいる場合、非喫煙者も知らず知らずのうちに受動喫煙で煙を吸い込んでいるかもしれません。タバコは先端部分から出る副流煙のほうが有害物質を多く含んでいるため、健康へのリスクを考慮すれば、受動喫煙を防ぐための対策は必要不可欠です。
喫煙ブースの設置も念頭に置きつつ、快適な環境づくりに取り組みましょう。
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