世界の喫煙状況や問題とは?海外での喫煙対策や喫煙への意識などを解説
受動喫煙による健康への悪影響が問題視されている昨今、世界的に屋内禁煙化の流れが進んでいます。日本も例外ではなく、分煙や禁煙化など受動喫煙を防止するためのさまざまな措置が行われています。
本記事では、諸外国で喫煙対策が進んでいる背景や外国人の喫煙に対する意識、各国が取り組んでいる喫煙対策を紹介します。
世界の喫煙状況・問題への措置
喫煙が健康に与える悪影響は古くから認知されている問題で、WHO (世界保健機構)は1970年頃からたばこの有害性を訴え続けていました。1989年には、WHOにより毎年5月31日を「世界禁煙デー」とすることが定められるなど、禁煙をテーマとしたさまざまな活動が世界的に行われています。
その後、WHOによって「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発令され、全面禁煙化をはじめとしたたばこ規制への取り組みが各国で進められるようになりました。
日本では2003年に「健康増進法」を施行し、学校や病院、飲食店など多数の人が利用する施設では受動喫煙防止のための措置を行うよう努めなければならないと決められています。
こうした各国の規制により、世界の喫煙者の数は年々減少しています。
諸外国で喫煙対策が進む背景
諸外国で喫煙対策が進められている背景は主に2つあります。1つは「海外における受動喫煙の問題」、もう1つは「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の存在です。
海外における受動喫煙の問題
WHOによると、たばこの受動喫煙が原因で死亡した人は年間に130万人に上るといわれています。
こうした受動喫煙による健康被害の問題は海外でも重く受け止められており、全面禁煙化を進める国も少なくありません。例えば、アイルランドでは国全体を全面禁煙化する法律が施行されたり、アメリカでは半数以上の州が屋内全面禁煙化されたりしています。
また、子どもに対する健康面の影響も懸念されており、国や州によっては子どもが乗車する自家用車の中もたばこ規制の対象となっています。
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の存在
喫煙対策が進む理由としては、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の存在も大きく影響しています。
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」とは、WHOが2005年に発令した条約です。条約には、たばこの広告規制や包装・ラベルの規制、禁煙推進に対する措置など、たばこの消費量や喫煙率を減少させるためのさまざまな対策が盛り込まれています。
現在は182ヵ国が締約国となっており、それぞれの国では本条約に則ったたばこ規制に取り組んでいます。
外国人の喫煙に対する意識
喫煙対策は世界全体で実施されていますが、国ごとに喫煙に対する意識はやや異なります。ここからは、日本と諸外国の喫煙に対する意識の違い、諸外国の喫煙に対する考え方を紹介します。
日本と諸外国の喫煙に対する意識の違い
海外では喫煙対策が進んでおり、屋内全面禁煙などの厳しい措置を行う場合が多いです。2020年時点では、67ヵ国が屋内全面禁煙の措置を行っています。
一方、日本も法律の改正により喫煙の規制が強化され、屋内は原則として禁煙とされています。ただし、技術的な基準を満たしたうえで喫煙室の種類に応じた標識を提示している場合は、屋内でも喫煙が可能です。
また、学校や病院など第一種施設以外の野外での喫煙に関しては、とくに規制されていません。喫煙対策が進んでいる諸外国に比べると、日本のたばこに関する規制は緩いといえます。
諸外国の喫煙に対する意識とは
国ごとに文化や国民性が異なる以上、喫煙に対する意識や考え方も変わります。下記は諸外国の喫煙に対する意識や考え方の傾向をまとめたものです。
国 | 喫煙に対する意識や考え方の傾向 |
アメリカ | ・「喫煙者を採用しない」という考えが普及しており、採用時に喫煙者でないことを証明しなければならない場合がある ・喫煙に対する考え方が否定的な傾向にあり、喫煙者も年々減少している |
中国 | ・喫煙には比較的寛容な傾向がある ・喫煙者が一緒にいる場合は相手にたばこをすすめる風習もある |
タイ | ・たばこの規制は日本よりも厳しい傾向にある ・公共の場所だけでなく屋内、タクシー車内、主要ビーチは禁煙 |
ベトナム | ・たばこによる健康被害への意識は薄い傾向にある ・公共の場所や屋内のオフィスは禁煙であるものの、違反した場合の罰金は高くない |
シンガポール | ・アジアのなかでは喫煙に関する法律が厳しい ・罰金は全体的に高額で、たばこのポイ捨てには1,000シンガポールドル(約109,138円(※))の罰金が課せられる |
(※)2023年12月28日時点での金額
日本と諸外国における喫煙対策
たばこの健康被害を少しでも減らせるよう、多くの国では喫煙対策に取り組んでいます。ここでは、日本と諸外国が取り組んでいる喫煙対策の例を紹介します。
国 | 喫煙対策 |
日本 | ・公共の場所や職場の分煙の徹底 ・ニコチン入り電子たばこの販売を規制 アメリカ ・半数以上の州が屋内全面禁煙 ・メンソール以外のフレーバーたばこの発売を禁止 |
中国 | ・中国全土で公共の場所での喫煙を禁止 ・北京市では原則として屋内禁煙、上海市では屋内完全禁煙 |
韓国 | ・学校や病院、公共交通機関、大型施設などを禁煙化 ・屋外での喫煙は規制の対象外 |
台湾 | ・公共交通機関や施設など3人以上が集まる室内は全て禁煙 ・野外では歩きたばこ禁止、屋根がある場所も野外であれば基本的に禁煙 |
タイ | ・エアコンの設置されている飲食店や屋外の飲食店などは、全面禁煙 ・公共施設の入り口から半径5メートル以内は禁煙 ・電子たばこ禁止 |
ベトナム | ・公共施設は禁煙(指定地域を除く) ・道路や公道は喫煙可能だが、一部の旧市街やビーチは禁煙 |
シンガポール | ・公共施設や飲食店は禁煙 ・電子たばこの輸入・販売禁止 |
フランス | ・2006年から屋内の喫煙は禁止 ・法の基準を満たした喫煙専用スペースを設けることは可能 |
イタリア | ・公共交通機関や病院、学校などの公共機関は禁煙 ・飲食店では床面積の50%を上限とし、喫煙スペースの設置が許可されている |
オーストラリア | ・屋内での喫煙はほとんどの州で禁止 ・たばこの税金を段階的に引き上げており、1箱の値段は日本の約4倍 |
上記のように喫煙対策の方法は国によって異なりますが、基本的に公共の場所は規制の対象とされるケースが多いです。
まとめ
屋内全面禁煙や分煙の徹底、一部たばこの販売禁止など、形は異なりますが、喫煙に関する規制はさまざまな国で進められているのが現状です。
喫煙の規制が進む中で、喫煙者と非喫煙者の分煙がより重要になっています。手段の一つとして挙げられるのが、分煙機の導入です。皆が共生できる環境を作り上げていきましょう。
■監修者情報
名前:白濱龍太郎
プロフィール:
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。同大学睡眠制御学快眠センター等での臨床経験を生かし、総合病院等で睡眠センターの設立、運営を行ってきた。それらの経験を生かし、睡眠、呼吸の悩みを総合的に診断、治療可能な医療機関をめざし、2013年に、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニックを設立。2014年には、経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへ睡眠時無呼吸症候群の教育を行った。2018年にはハーバード大学公衆衛生大学院の客員研究員として睡眠に関する先端の研究に従事。社会医学系指導医、睡眠学会専門医、認定産業医を有し、教育、啓発活動にも取り組んでいる。
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