運送物流に携わる企業として交通安全を伝える。株式会社関根エンタープライズにインタビュー

運送物流に携わる企業として交通安全を伝える。株式会社関根エンタープライズにインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

埼玉県越谷市に本社を構える株式会社関根エンタープライズは、「わたしたちは日本一のありがとうを運びます」を経営理念に掲げ、総合物流サービスを提供しています。

トラックでの運送物流を行なうことから交通安全への意識も高く、大型車両の危険性を伝える活動を実施し、地域の交通安全に貢献してきました。また、各種認証・表彰を取得し、SDGsを意識した取り組みも実施しています。今回は同社の小山さんにSDGsにもつながる交通安全への取り組みについてお伺いしました。

多角的な運送物流サービスを提供する関根エンタープライズグループ



―本日はよろしくお願いします。まずは御社の沿革や事業内容を教えてください。

小山さん(以下、小山):弊社、株式会社関根エンタープライズは運送物流会社です。グループ企業には、箱形の輸送と倉庫を運営する株式会社関根エンタープライズTLS、平ボディーでの配送をメインとする株式会社関根エンタープライズUFC、横浜を拠点とする株式会社関根エンタープライズEXT、さまざまな商品を集めて翌日配送している株式会社関根ロジスティックス、建築関係に特化した配送の株式会社関根エンタープライズKPSと、5つの運送物流会社で全国展開できるよう徐々に事業規模を拡大させています。

また、物流事業のほかにも不動産仲介業の株式会社関根スマイルや、トラックのレンタルと整備工場をしている株式会社関根トラックレンタル、運送物流の専門校として一般社団法人ジャパンロジスティクスアカデミーがあります。


―小山さんは社内でどのようなお仕事に携わっているのですか?

小山:私は管理部や総務部が入っているグループ本社におりまして、一般社団法人ジャパンロジスティクスアカデミーの理事を務めるとともに、本社の部長として在籍しております。

自分たちの活動がSDGsになるとの気付きから取り組みを加速

―御社ではホームページにもSDGsに関するさまざまな取り組みを実施されていますが、SDGsに着目されたきっかけを教えてください。

小山:弊社が取り組みを始めた頃は、社会的にも「SDGs」という言葉の認知度が低かったと思います。徐々に認知度が上がってきたなかで「自分たちの取り組みもSDGsにあたるのではないか?」と気付いたところがスタートでした。

そのため「SDGsを意識してこれをやりましょう」という始まり方ではなかったんですね。従来からやっていたことに対し「SDGsのこの項目に該当するのではないか?」というようなスタートです。


―なるほど。SDGsに着目して取り組み始めたというより、それまであった活動が「SDGsにあてはまる」と気付かれて現在の取り組みの形になったのですね。

小山:そもそも運送物流業界は、地球環境の面ではどうしてもやり玉に挙げられる存在です。トラックを走らせれば二酸化炭素を排出しますし、国も排気ガスの規制をしています。

弊社でも独自に取り組んできたなかで、徐々にSDGsが意識されるようになり、自分たちも「SDGsって何?」と思うようになりました。

アイドリングストップなど直接車にかかわることだけなく、もっとほかにSDGsとしてできることはないかと考え、今の取り組みが始まった形です。

地球環境に関わる当事者としてやってきたことが自然とSDGsにつながり、取り組みの発展になったと思います。

地域の安全や社員への教育に注力



―SDGsの17のゴールのうち、御社がとくに注力している項目を教えてください。

小山:弊社では「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」の3点が取り組みのスタートであり、注力している項目です。


―御社で実施されている具体的な取り組み内容を教えてください。

小山:教育の面としてトラックを扱う業務上、安全にはとくに力を入れています。トラック協会や交通安全協会などと協力して、地域のイベントや幼稚園・学校で交通安全を伝える活動をしています。

幼稚園や学校では「運転手からは、トラックの近くで遊んでいる子どもの存在が見えづらい」と知ってもらう機会を作りました。車が好きな子も多いため、実際に大型トラックの運転席に乗せてあげて、トラックの周りにいる子どもたちが見えるかを体験してもらっています。

運転席からでは周りにいる子どもたちの姿は見えず、気付かずにトラックを動かしてしまうかもしれません。だから、トラックの周りで遊んではいけないよと伝えてきました。

トラック協会と協力して、交通安全体験ができる「サイトくん」という車両でシートベルトの重要性を体感してもらうイベントも実施しました。シートベルトは、装着していると窮屈に感じるものですが、事故発生時には人を守ってくれる重要な存在です。

また、交通安全協会からいただいた反射板や交通安全が書かれたボールペンを子どもたちに毎年配っています。反射板があると、ドライバーも夜間走行中、人の存在がわかり大変助かります。

ほかにも外国からの技能実習生を招いて技術を伝え、社内でも安全講習会を実施してドライバーの質を上げる取り組みもしてきました。女性も働きやすい環境を作れるよう、少しずつ取り組み内容を増やしています。

新卒生への育成も、弊社では5カ月間かけて行なうなど人材育成にも力を入れています。一般的な企業では長くても1カ月程度の研修でどんどん現場に出しているでしょう。

弊社は座学で物流業界の役割をしっかり学んでもらってから、トラックの運転を指導します。物流はどういった部分で活躍しているのか、自分たちが普段買っているものは手元に届くまで、どれだけ物流が関わっているのかを知っておくことが必要です。

座学を受けたあとも、すぐに一人で業務に入るのではなく、指導員を付けて現場の仕事を教えてもらいながら最終的にひとり立ちする流れを用意しています。

さらに「12.つくる責任つかう責任」の取り組みとして、古着を回収してワクチンを届ける活動をしています。始めてから、かれこれ6年以上になる取り組みです。

2、3年に一度、弊社では制服を入れ替えるのですが、古い制服を捨てるのではなく回収し、とある団体に寄付するとワクチンに変えて必要としている国や地域に届けてもらえます。

チャリティーイベントも実施しており、餅つき大会や花火大会を開催して、収益を寄付しています。越谷市の交通安全協会や警察署、消防局などに寄付し、横断歩道の補修やカーブミラーの設置、新一年生が使うランドセルカバーの購入資金などに使っていただきました。

物流業界は経済を回すなかで欠かせない存在



―SDGsに関連したイベントを毎年実施されていることで、社外からの反響や地域内での認知度に変化はありましたか?

小山:正直なところSDGs自体がまだ、一般の方に浸透していないのではないでしょうか? SDGsバッチをつけている方をよく見かけるようにはなりましたが、「あのバッジは何?」という反応がまだ多いと思います。

取り組んでいる企業の人ですと話題に上ることもありますが、SDGsは取り組んだからといってすぐに結果が出るものでもないでしょう。弊社としても、自分たちができることを実践しているだけです。やはり交通安全の活動によって1件でも事故が減り、悲しいニュースが流れないようにしたいという思いが第一です。

SDGsの認知度を高めたい、広く知ってほしいというより、交通安全を前面に出した活動が、結果としてSDGsにつながっているという感覚で取り組んでいます。

もう少し世間一般にSDGsへの理解が深まれば、弊社の交通安全の取り組みもSDGsだと言ってもらえるのではないでしょうか。我々の活動もSDGsの一環だという伝え方をするのは、そうなってからだと思います。


―交通安全のイベントや地域の活動は本業とは別の取り組みですが、社内の反響や意識の変化、取り組んでいて良かったと感じることがあれば教えてください。

小山:古い制服を回収してワクチンにする活動については「この古い制服がワクチンに変わるの?」と、おどろく声が上がっていました。私もびっくりした人間の一人で、どうして布製品がワクチンになるのか不思議に思うレベルです。

回収して寄付した団体が古着を利活用して収益を得て、それがワクチンの購入代金になると、少しずつイメージが見えてくるのですが、最初はインパクトが大きいでしょう。不思議に思いながらも、みんな快く制服を回収に出してくれています。

また、交通安全のイベントをしていると、弊社のドライバーも子どもたちに話しかけて、大きな車の危険性を伝えてくれています。ドライバーたちも安全への意識が徐々に高まっていると感じられる瞬間です。

時代も変わり、物流業界のイメージも変化していると思います。労働環境の面もですが、交通安全イベントを通じてドライバーへのイメージも怖い印象から優しい印象へと変わり、若い人たちもこの業界に興味を持ってくれるきっかけにもなっています。

物流は、経済活動においては血液のようなものです。安全な運送物流は経済を回すために不可欠であり、自分たちの頑張りが日本経済の発展につながると理解できれば仕事のやりがいも感じられるでしょう。

みんなが無理せず続けられることが広がれば大きな力になる



―今後SDGsの取り組みで注力したいことや新たに始めたいことについて、計画や目標があれば教えてください。

小山:交通安全の取り組みは引き続き行ない、今後はもっと幅広くやっていきたいと思います。少子高齢社会ということもあり、子どもたちを守る活動は大切です。

横断歩道が消えかけている場所やカーブミラーが少ない場所があれば、弊社のチャリティー活動でも少しはお役に立てればと思っています。これまでも、弊社主催の餅つき大会や花火大会で得た収益金を消防局などに寄付してきました。

企業として無理な背伸びはせず、できる範囲のことで今後もSDGsの取り組みをしていきたいと思っています。


―SDGsに関心のある読者へのメッセージをお願いします。

小山:自分を無理に変えてまで取り組む必要はありませんが、今の自分たちにできることを、皆さんにもぜひ挑戦してもらいたいと思います。私自身も月々3,000円の負担で医薬品や栄養食を届けられる、チャイルドスポンサーをしています。何万円もの負担はできませんが、数千円なら少し遊びに行くのを控えればできることです。

小さなことでも取り組んでもらえれば一つの波紋になって、いろんな人たちを巻き込むきっかけになるのではないでしょうか。読者の皆さんも背伸びせず、今できることをやり続けてほしいなと思います。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。