居酒屋を喫煙可にするには?必要な条件や活用できる助成金などを解説

居酒屋を喫煙可にするには?必要な条件や活用できる助成金などを解説

受動喫煙防止対策を目的とする「改正健康増進法」により、これまで喫煙ができた居酒屋などを含め、屋内での喫煙が原則禁止となりました。

喫煙防止対策の方法や基準は、施設の種類や目的、規模などによって決められていますが、「居酒屋ではどのような対策が必要なのか」「喫煙室を設けるにはどうすれば良いのか」など疑問を持つオーナーの方もいることでしょう。

そこでこの記事では、居酒屋に喫煙室を設置するために必要な条件や基準、活用できる助成金などについて解説します。

居酒屋の喫煙可否は改正健康増進法で決められている

2020年4月に全面施行された「改正健康増進法」により、受動喫煙を防止する対策が義務化されました。この法律では、喫煙・禁煙に関するルールが定められ、居酒屋などは原則屋内禁煙です。

ただし、条件を満たせば、屋内での喫煙も可能です。喫煙室を設置する場合には、設置条件や構造基準などを正しく理解する必要があります。

居酒屋を分煙にするメリット

法改正により、居酒屋での喫煙が実質的に制限されるため、事業者にとってはマイナスなイメージが大きいかもしれません。

しかし、法律を守り分煙にすることで、店舗の環境改善やイメージアップ、新たな客層の開拓といった良い効果も期待できます。

ここでは、居酒屋を分煙にすると具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

◇望まない受動喫煙を防げる

受動喫煙とは、喫煙者のたばこの煙を吸ってしまうことです。非喫煙者の多くは、健康を損ねる可能性があるたばこの煙は、できる限り避けたいと考えています。

居酒屋に禁煙のスペースを設置することで、望まない受動喫煙を防ぎ、非喫煙者へのたばこの煙による健康被害の防止につながります。

また、居酒屋を分煙にすることで、非喫煙者の方も利用しやすい環境になるでしょう。これまで、たばこの煙を理由に居酒屋の利用を避けていた方を、新たな客層として取り込める可能性もあります。

◇従業員の健康を守れる

受動喫煙による健康被害の可能性は、居酒屋で働く従業員にもおよびます。

居酒屋を分煙にすることで、従業員の健康を守り、安心して働ける就労環境を提供できます。また、たばこによる健康被害の不安を払拭できる分煙は、求職者に対しても良いアピールとなるため、人材の確保にもつながるでしょう。

◇喫煙者・非喫煙者どちらも利用できる

分煙がされている居酒屋であれば、喫煙者・非喫煙者の双方が快適に利用できます。

普段喫煙できる場所が限られている喫煙者にとって、喫煙スペースの有無は店舗を選ぶ際の優先項目の一つです。また、受動喫煙の心配がない分煙された店舗であれば、非喫煙者も不安要素を払拭して利用できるでしょう。

喫煙者・非喫煙者の双方にとって快適な環境を整えれば、利用者層の拡大、リピート率アップも見込めます。

◇子連れでも利用できる

分煙にすることで、これまでたばこによる子どもの健康被害を心配して居酒屋の利用を敬遠していた、ファミリー層の集客も可能になるかもしれません。

また、家族のなかの喫煙者が喫煙を我慢する必要がなくなり、家族全員が快適に過ごせるため、滞在時間が延びて売上アップも期待できます。

◇店内にたばこの臭いがつきにくい

たばこは、煙がなくなったあとも強い臭いを室内に残します。分煙して喫煙スペースを制限すれば、喫煙スペース以外の場所にたばこの臭いがつきにくくなり、非喫煙者やたばこの臭いを嫌う方にも、快適な空間を提供できます。

たばこの臭いによって料理の味や匂いを損なうリスクも減るため、利用者の食事に対する満足度向上にもつながるでしょう。

また、喫煙スペースを制限することで、灰皿やヤニ汚れの掃除の範囲が少なくなるため、従業員の作業負担が軽減される点もメリットといえるでしょう。

居酒屋を分煙にする時の注意点

居酒屋を分煙にするメリットは多いですが、同時に気を付けておかなければならない点もいくつかあります。居酒屋を分煙にするときに押さえておくべき注意点について見ていきましょう。

◇広さの確保が必要

分煙によって新たに喫煙スペースを設けなければならない場合、それなりの広さを確保する必要があります。

すでに喫煙室があり、排煙装置の設置などをするだけであればそれほど影響はありませんが、そうでない場合は席数を減らして対応することなども必要になるでしょう。

また、小規模な店舗で店内にスペースを確保できない場合、店舗の外に喫煙スペースを設けるという選択肢も考えておかなければなりません。

ただし、客席面積が一定以下で、いくつかの条件を満たせば、喫煙可能店舗として認められる場合もあります。詳しくは後述します。

◇費用がかかる

改正健康増進法に則った分煙を行なうには、喫煙スペースと禁煙スペースを区分けする、排気システムや喫煙ブースを設置するなどが必要なためコストがかかります。

設備を導入してからも、常に空気清浄機を稼働させておくための電気代や、メンテナンス費用などがランニングコストとしてかかってきます。

また、喫煙ブースの設置に際して、出入口の風速測定やレポートの作成・保管などにも工数を割かなければなりません。測定は、法律要件を満たしていることをおおむね3ヵ月毎に計測し、そのレポートは3年間保管しておく必要があります。

さらに、喫煙ブースの設置工事で営業を休止しなければならない期間がある場合は、従業員への休業手当を支払う必要があります。

分煙を進めるうえでは、初期費用だけでなく、継続的にかかるコストや営業休止中のリスクも考慮しておく必要があるでしょう。

居酒屋に喫煙室を設置するには?条件を解説



健康増進法の改正により、屋内での喫煙は原則禁止とされました。しかし、以下の技術的基準を満たせば、居酒屋などの飲食店では、喫煙室の設置が認められます。

喫煙専用室(飲食不可)を設置する際の技術的基準
1. 出入口において、喫煙室の外側から内側に流入する空気の気流が0.2m/秒以上であること
2. たばこの煙が喫煙室の中から施設の屋内に流出しないよう、壁・天井等によって区画すること
3. たばこの煙が施設の屋外に排気されていること

さらに、以下の条件をすべて満たす飲食店では、喫煙可能室(飲食可)の設置が認められます。店舗全体を喫煙可能室とすることもできます。

喫煙可能室(店)設置の要件
1. 令和2年4月1日時点ですでに営業している
2. 客席面積が100㎡以下
3. 資本金額または出資額が5,000万円以下の中小企業または個人経営

居酒屋における禁煙・喫煙に関する店頭表示

喫煙室がある居酒屋などでは、喫煙環境が利用者にわかるように指定された標識の掲示が義務付けられています。

標識の表示方法は、以下のとおりです。

喫煙・禁煙の状況 表示場所
全席禁煙 店舗出入口に禁煙表示
喫煙席を設置 店舗出入口および喫煙室の出入口の両方に所定の標識を表示
喫煙を主目的とする施設 店舗出入口に所定の標識を表示

上表のとおり、喫煙・禁煙の状況によってそれぞれ表示方法が異なるため、掲示する標識の種類や標識の表示場所などを確認しておきましょう。

また、喫煙室がある場合、20歳未満の人が入ることを禁止する標識の掲示も必要です。来店客だけではなく、接客や清掃を目的とする従業員であっても、20歳未満の人が喫煙室に立ち入ることは原則禁止されています。

居酒屋に設置できる喫煙室は、店舗の条件によって異なる

改正健康増進法では、原則店舗内での喫煙は禁止です。分煙する場合は、一定の条件を満たすことで「喫煙専用室(飲食は不可)」を設置できます。さらに、いくつかの条件をクリアすれば、飲食可能な「喫煙可能室」を設けることが可能です。

ここでは、どのような条件があるのか、条件を満たしていない場合どのような選択肢があるのか見ていきましょう。

◇喫煙(可能)室を設置するための店舗の条件

居酒屋に喫煙室を設置する場合には、まずは設置可能な喫煙室を確認する必要があります。

1. 令和2年4月1日時点ですでに営業している
2. 客席面積が100㎡以下
3. 資本金額または出資額が5,000万円以下の中小企業または個人経営

上記3項目について、1つでも当てはまらないものがある場合に設置できるのは、「喫煙専用室」または「加熱式たばこ専用喫煙室」です。3項目すべてに当てはまるなら、「喫煙可能室」の設置や「喫煙可能店」としての営業が認められます。

詳細は、以下のホームページをご確認ください。3つの質問に答えることで、設置可能な喫煙室を判定できます。

参考:飲食店のみなさまへ|なくそう!望まない受動喫煙。

また、喫煙室を設置したときは、管轄の保健所への届出をする必要があるため、忘れずに行ないましょう。

◇屋外喫煙所の検討も

店内に喫煙室を設置するのが難しい場合は、屋外に喫煙スペースを設けることも検討してみましょう。例えば、店舗の外に灰皿を設置する、テラス席だけ喫煙にするなどの方法があります。

ただし、屋外を喫煙スペースにする場合は、近隣住人や歩行者に迷惑がかからないよう配慮が必要です。トラブルを避けるためにも、テナントとして入っている場合はあらかじめビルの管理者などに相談・確認しておくようにしましょう。

安易に屋外に喫煙スペースを設置してしまうと、店舗のイメージを損なうかもしれません。屋外に喫煙スペースの設置を検討する際は、慎重に計画を進めましょう。

居酒屋での喫煙室設置には助成金がある

受動喫煙防止対策を行なう目的として、居酒屋に喫煙室を設置する場合、自治体や公社などから助成金が受け取れる可能性があります。ここでは、「生衛業受動喫煙防止対策事業助成金」と大阪府の事例をご紹介します。

◇生衛業受動喫煙防止対策事業助成金

「生衛業受動喫煙防止対策事業助成金」の対象は、従業員を雇わず営業している個人事業主で、労災保険に加入していないことが条件です。

基準を満たす喫煙室の設置・改修にかかる経費のうち、工費や設備費、備品費、機械装置費などが助成対象となります。助成率は費用の3分の2で、助成額の上限額は100万円です。

このほかにも、自治体が喫煙所を設置する事業者に対して補助金などを用意している場合もあるため、各都道府県や市区町村のホームページも併せて確認してみましょう。

◇大阪府の例

大阪府では、府内の飲食店を対象に、受動喫煙防止対策を目的とした喫煙専用室の整備にかかる経費の一部を補助する支援を行なっています。以下のすべての項目に該当する事業者が補助対象です。

1. 令和2年4月1日以前から大阪府内で継続して営業している飲食店であること
2. 資本金等5,000万円以下の個人経営または中小企業経営であること
3. 客席面積が100㎡以下であること
※従業員の雇用がなく、客席面積が30㎡以下の場合は除く

補助要件は「喫煙専用室等設置事業」と「全面禁煙化事業」の2種類です。喫煙専用室および指定たばこ専用喫煙室の設置・改修を行なう場合、以下の条件を満たす必要があります。

1. 入口における風速が0.2m/秒以上になること
2. たばこの煙が室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること
3. たばこの煙が屋外に排煙されていること

3を満たすことができない場合は、以下の2点を両方クリアしなければなりません。

・総揮発性有機化合物の除去率が95%以上であること
・室外に排気される空気における浮遊粉じんの量が0.015mg以下となること

また、「喫煙専用室等設置事業」には、屋外喫煙所の設置・改修も含まれています。屋外の場合、「喫煙所の直近の建物の出入口などにおける浮遊粉じん濃度が増加しないこと」「専ら喫煙の目的で使用するための構造や設備であること」が条件です。

「喫煙専用室等設置事業」の補助金額は、助成率が経費の4分の3で上限額が300万円、「全面禁煙化事業」の場合は、助成率が経費の4分の3で上限額は100万円です。

改正健康増進法を守らない場合は罰則も



改正健康増進法を守らない場合には、過料といった罰則が科せられることがあります。違反者だけではなく、施設管理者が法律に定める義務を怠った場合にも、管理者側に罰則が科せられる可能性があると認識しておきましょう。

具体的には、禁煙場所で喫煙した場合には30万円以下の過料が科せられ、施設管理者が標識の掲示義務などを怠った場合には50万円以下の過料が科せられます。

違反と認められるとまずは指導が行なわれ、それでも改善がなされない場合には勧告、命令、社名公表、罰則と段階を踏むのが基本です。

なお、自治体によっては、国が定める改正健康増進法よりも、さらに厳しい条件の受動喫煙防止条例を定めている場合があります。管轄の自治体の条例はどのような内容なのか、事前に確認しておくと安心です。

施設内に分煙機を置くなら、クリーンエア・スカンジナビア

喫煙室を設置したくても、設置スペースの確保や排気設備の工事などが難しく、断念せざるをえない場合もあるでしょう。また、喫煙室の要件を満たすための工事費用や、快適な環境を維持するための人的コストも決して小さいものではありません。

そこでおすすめなのが、喫煙ブースの導入です。クリーンエア・スカンジナビアが提供する喫煙ブースは、屋内で100Vのアース付き電源があればどこにでも設置できます。設置スペースを自由自在に選ぶことができ、大きな工事費用もかかりません。

また、喫煙ブースは従来の分煙技術では困難とされていた、たばこの煙の粒子やガス成分をほぼ100%捕集・除去します。厚生労働省が定める「脱煙機能付き喫煙ブース」の技術的基準にも対応しているため安心してご利用いただけます。

喫煙ブースの設置後は、専門スタッフによる空気浄化フィルターとたばこの吸殻の点検・交換などの定期メンテナンスが実施されるため、快適な空気環境を維持できます。また、法律要件を満たすための計測・レポート作成についても代行しているため、管理にも手間がかかりません。

限られたスペースを有効活用でき、金銭的・人的コストの削減が期待できる、クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースを、ぜひご検討ください。

分煙機(キャビンソリューション)

クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースの導入事例

最後に、クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースの導入事例を紹介します。


居酒屋店舗内に設置された4人用喫煙ブース

お客様からは、非常に好評をいただいております。喫煙されるお客様からは、「店の前でタバコを吸って白い目で見られることもなくなり、安心して喫煙できるようになった」というお声をいただいております。喫煙されないお客様からは、「タバコの煙を気にすることなく店内でお食事を楽しめるようになった」というお声をいただいております。

まとめ

改正健康増進法により、居酒屋などは原則屋内禁煙と定められていますが、条件を満たした喫煙室を設置することで屋内での喫煙は認められています。

居酒屋に喫煙室を設置する場合は、法律の内容を確認し、喫煙室の設置条件や構造基準などを理解しておくことが大切です。

また、受動喫煙防止対策を目的とした分煙をすることで、事業者側も多くの恩恵を受けられるため、助成金などをうまく活用し、店舗に適した対策を行ないましょう。

分煙機(キャビンソリューション)