脱炭素社会に貢献する最先端技術の開発。冨士色素株式会社から設立されたGSアライアンス株式会社にインタビュー

脱炭素社会に貢献する最先端技術の開発。冨士色素株式会社から設立されたGSアライアンス株式会社にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。

この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

兵庫県に本社を構える冨士色素株式会社は、昭和13年に設立し、長年に渡って有機顔料や各種色材製品の製造を行っている会社です。

10年ほど前から、脱炭素社会に向けた研究・開発を進めるために「GSアライアンス株式会社」を新しく設立し、生分解性プラスチック製品の製造をはじめとする、環境にやさしい最先端の技術開発を進められてきました。

今回は冨士色素株式会社とGSアライアンス株式会社の代表取締役社長を務める森良平さんに、最先端技術の解説や今後の展望についてお伺いしました。

SDGsの促進に注力するために新しく会社を設立



―本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。

森さん(以下、森):弊社は昭和13年に創業し、有機赤色顔料、各種色材製品の専門メーカーとして事業を展開してきました。近年は、時代によって変化するニーズに対応するために、新しい分野の開拓にも尽力しています。

10年ほど前からSDGsに注力して取り組み始め、「GSアライアンス」という会社を社内に作り、脱炭素社会に向けた製品の開発を行っています。

具体的な製品は、生分解性プラスチック(焼却処理を行わなくても微生物の働きによって自然に還る素材)、蓄電池・太陽電池・燃料電池の開発などです。


―ありがとうございます。脱炭素社会に向けて製品の開発を行うようになったきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

森:弊社の代表は私で3代目になりました。これまでの会社の方針とは異なるところもありますが、「今後は地球環境に配慮した製品の開発を進める必要がある」と考えたことがきっかけとなりました。

会社としては初めての試みのため、従業員からの反対意見をいただくこともありましたが、この取り組みを進めることは会社として必要な判断だった思います。

脱炭素社会に向けた製品は海外のほうが浸透している傾向にあるため、今後は海外への製品展開も視野に入れている状況です。

生分解性プラスチックや蓄電池など地球にやさしい製品の開発



―研究・開発されている生分解性プラスチック製品について詳しく教えてください。

森:プラスチックは石油化学製品で作られていますが、弊社の生分解性プラスチックは天然植物に置き変えて作っているものです。処分する時にも焼却処理の必要がなく、自然界の微生物によって分解されて自然に還る素材を製造しています。

しかし、条件によっては生分解性するのにかなりの年月がかかるため、むやみに自然環境に廃棄するのはお勧めできないので、注意が必要です。

当社では、樹脂ペレットと呼ばれる原料を成形機に入れて、スプーンやお皿、歯ブラシといった製品を作っており、国内では珍しい生分解性プラスチックを使用したネイルチップの製造も行っています。

また当社の製品はプラスチック素材にとどまらず、天然素材を使ったマニキュアやインクなどの製造も行なっているので、今後は全ての化学製品にも適応していきたいと考えています。

これらの技術は、国際連合関連機関(UNOPS S3i Innovation Centre)が支援するスタートアップ企業として採択され、国際連合工業開発機関(UNIDO:United Nations Industrial Development Organization)の技術として登録されています。

そのため、その証である「STePP:Sustainable Technology Promotion Platform」のロゴを使用できる製品です。


―電池の研究・製品にはどのようなものがありますか?

森:スマートフォンやパソコン、車にエネルギーを送ることができる蓄電池については、幅広く使用されている「リチウムイオン電池」だけでなく、次世代の蓄電池となる「リチウム硫黄電池」「アルミニウム硫黄電池」「全固体電池」などを開発しています。

特にアルミニウム硫黄電池に使用しているアルミニウムは、融点が低くリサイクルしやすい金属です。そのため資源をリサイクルして利用することができ、比較的安価な商品を製造することができます。

理論的には、リチウムイオン電池の7,8倍の電池容量を持っているため、電池としても優秀な製品であり、安全な材料で構成されているので爆発したり、燃えたりする心配もありません。現在は、電池容量の向上等さらなる進化を求めて研究を進めています。

また太陽電池についても、屋根の上に取り付ける従来の製品ではなく次世代型の太陽電池を研究・開発しています。「ペロブスカイト太陽電池」と言われるものですが、電力変換効率が向上し、さらに安価で販売することができる可能性があります。また曲げられるほど薄く柔らかい素材を使用しているので、使い方も幅広くなりました。

二酸化炭素を原料とする人工光合成の技術

―人工光合成という技術の研究も進められているそうですね。

森:はい。地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素(CO2)を原料として、エネルギーや化学物質を作る研究です。

通常の光合成は、植物が太陽光エネルギーを吸収してエネルギーに変え、二酸化炭素をデンプンなどの有機物に合成しますが、弊社における人工光合成では、二酸化炭素・水・太陽エネルギーから「ギ酸」を合成します。

これは化学物質にもなるものなので、二酸化炭素を有効活用することで地球にやさしい製品を製造することができますね。

脱炭素社会に向けた研究を進めてより良い未来をつくる



―これらの製品はどのような方が購入されているのでしょうか?

森:生分解性プラスチック・天然植物由来のコーティング材料・インクなどの製品や、セルロースナノファイバーと言われるセルロースを主成分とする植物性の繊維は、国内外の企業様に購入していただいています。

また生分解性プラスチックの製品を「NANO-SAKURA」という当社のネットショップで販売していますが、ネイルチップについては一番問い合わせが多く、購入されている商品です。ほかにも、皿・スプーン・コップ・ボールペンなどを販売していますが、値段が高いためあまり購入されていないのが現状ですね。

近いうちにマニキュアなどの製品を販売する別のブランド(Re:soil)を立ち上げ、販売の拡大を目指していこうと考えています。


―今後の展望を教えてください。

森:電気自動車のようにAIの技術が進んでいくことで、脱炭素社会に貢献する技術も比例して進んでいくのではないかと考えています。

当社でもSDGsに関する研究・開発を進めていき、国内だけでなく海外にも積極的に進出していきたいと思います。自分たちの会社のペースで進めていくことも大切ですが、投資を募り、今後はスピードを上げて成長させていきたいですね。


―SDGsや持続可能な企業活動に関心のある読者の方に向けて、メッセージをお願いします。

森:これからも地球温暖化は進行し、通常の生活をするのも大変になる時が来るのではないかと危惧しています。食べ物の価格が高騰したり、水不足が進んだりして困らないためにも、個人で気をつけられるところから行動して、より良い未来をつくっていきましょう。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。