喫煙室のタイプや設置基準を解説。バーやレストランで喫煙はできる?
新規顧客の獲得や法改正への対応を踏まえ、喫煙室の新設を考えている店舗や施設は増えていることでしょう。特に、喫煙と飲食を同時に楽しめるバーやレストランなどは、法改正に合わせて具体的にどのような喫煙室を設置すれば良いか、悩んでしまうかもしれません。
喫煙室を設置する際には効果やコスト面のほか、店舗・施設の規模や目的なども考慮して、適した広さや換気設備を選ぶことが大切です。
そのためには、適正な設置基準を知り、それに則って喫煙室の設計・設置を考えることも必要になるでしょう。
喫煙室は4つのタイプに分類されます。この記事では、タイプごとのルールを解説したうえで、喫煙室設置の基準とその算出方法についても詳しく紹介します。
喫煙室を設置するために知っておくこと
2018年7月、健康増進法の一部を改正する法律が成立しました。この条例は飲食店をはじめ、学校や病院などさまざまな建物における望まない受動喫煙を防止するためのマナーがルールとなって明確化されたものであり、2020年4月1日から全面施行されました。
屋内に喫煙室を作る際に大切なことは、以下の2点です。
・喫煙スペースからたばこの煙や臭いを漏らさないこと
・喫煙スペース内の空気環境を良好に保つこと
屋内の分煙には、喫煙室の換気扇や窓など換気設備が必要になります。室内の空気を清浄に保つには、換気設備を適正に設置して空気を適宜入れ替えることが肝心です。非喫煙空間の空気を汚さないことだけでなく、喫煙スペース内の空気をできるだけきれいな状態にすることも考慮しましょう。
喫煙室のタイプ
喫煙室は目的や設置できる場所の違いから、以下の4タイプに分類されます。
・喫煙専用室
・加熱式たばこ専用喫煙室
・喫煙目的室
・喫煙可能室
タイプごとにルールが定められているため、それを把握したうえで設置を検討することが大切です。各タイプの基本的なルールを以下の表にまとめたので、併せてご確認ください。
設置する場所 | 喫煙 | 飲食 | 20歳未満の立入 | |
喫煙専用室 | 施設の一部 | 〇 | × | × |
加熱式たばこ専用喫煙室 | 施設の一部 | △ (加熱式たばこに限る) |
〇 | × |
喫煙目的室 | 施設の全部または一部 | 〇 | 〇 | × |
喫煙可能室 | 施設の全部または一部 | 〇 | 〇 | × |
◇喫煙専用室
喫煙専用室とは、一般的な事業者が設置できる喫煙スペースです。学校、病院、児童福祉施設、行政機関などを除く「第二種施設」が対象であり、施設の一部に設けることができます。
なお、「第二種施設」にあたる施設の具体例は以下のとおりです。
・飲食店
・ホテル、旅館
・工場
・オフィス
・国会
・裁判所
・鉄道
「喫煙専用」という名称が示すように、喫煙専用室はあくまで「たばこを吸うためのスペース」です。喫煙以外の目的で使うことは認められていないため、飲食などのサービスを提供したり、会議を行なったりすることはできません。
喫煙専用室は、客・従業員を問わず、20歳未満の方は入れません。たとえ喫煙目的ではなくても立ち入り禁止となっているため、注意が必要です。
喫煙可能スペースを設ける場合、施設の出入り口に喫煙専用室があることを示す標識を掲示しなくてはなりません。また、喫煙室の出入り口には、喫煙専用スペースであることと、20歳未満の者は立ち入り禁止であることの2点がわかるように標識を設置することも義務付けられています。
ルールをきちんと把握し、特に20歳未満の客や従業員が喫煙室だと気付かずに入室してしまうことのないように十分配慮しましょう。
◇加熱式たばこ専用喫煙室
加熱式たばこ専用喫煙室とは、その名のとおり「加熱式たばこ(指定たばこ)を吸うためのスペース」のことです。加熱式たばこ専用喫煙室では、紙巻きたばこを吸うことはできないため、設置の際にはその旨がわかるように注意喚起をしなければなりません。
一方、加熱式たばこ専用喫煙室では、経過措置として飲食などのサービス提供が認められているため、喫煙専用室より用途が広いといえます。
その他のルールは基本的に喫煙専用室と同じで、一般的な事業者が使う第二種施設が対象となります。施設の一部に設置できるという点も同様です。
加熱式たばこ専用喫煙室を設ける場合も、施設の出入り口と加熱式たばこ専用喫煙室の出入り口の両方に標識を掲示する義務があります。
喫煙専用室と同じように、20歳未満の方は施設の利用者・従業員ともに加熱式たばこ専用喫煙室には立ち入りができません。例えば20歳未満の従業員がいる場合、仕事上の接客や掃除のためであっても喫煙室に立ち入ることは禁止となります。また、営業前や営業後であっても立ち入り禁止という点にも注意しましょう。
万が一、立ち入らせてしまった場合は、施設の管理権原者などが指導・助言の対象となってしまうため、ルールの周知徹底を図ることが重要です。
◇喫煙目的室
喫煙目的室とは、喫煙をおもな目的とする「特定事業目的施設」に設置できる喫煙スペースのことです。以下に挙げるような施設の一部、または全部を対象として設置することができます。
・たばこ販売店
・公衆喫煙所
・シガーバー
・スナック
たばこを吸うだけではなく、飲食などのサービスを提供することも可能です。ただし、米飯類、パン類、麺類といった主食を出すことは原則認められていないため、注意しましょう。
例外として、喫煙をおもな目的としているシガーバーなどがランチ営業をしている場合、食事の提供がメインではないため、ランチ営業時間に限れば主食の提供は可能です。また、スナックなどで出前の主食を提供することや、電子レンジで温めるだけの主食を提供することも認められています。
◇喫煙可能室
喫煙可能室とは、経営規模が小さい既存の飲食店である「既存特定飲食提供施設」が設置できる喫煙スペースです。以下の要件をすべて満たす飲食店が対象であり、施設の一部、または全部を喫煙可能室とすることができます。
・2020年4月1日以前から営業している
・資本金が5,000万円以下
・客席面積が100㎡以下
・従業員がいない(東京都のみ)
喫煙可能室は、経営規模が小さい飲食店の場合、事業の継続に影響をおよぼすことが考えられるため、これに配慮し、経過措置として設けられているものです。当然ながら喫煙だけではなく、飲食などのサービスを提供することも可能です。
ただし「2020年4月1日以前から営業している」という要件が定められているため、それ以降に開業した飲食店は対象外という点に注意しましょう。
また、喫煙可能室を設置する場合のみ、管轄の保健所などへの届け出が必要です。
◇カラオケボックスやホテルの客室はどうなる?
では、カラオケボックスやホテルの客室はどうなるのでしょうか?
カラオケボックスを喫煙室にする場合は、個室であっても、後述する技術的基準を満たさなければなりません。そのうえで、ほかの喫煙室と同様に、施設の出入り口や喫煙スペースの出入り口に標識を掲示する、20歳未満の喫煙スペースへの立ち入り禁止といった条件も守る必要があります。
ただし、紙巻きたばこを喫煙する場合は喫煙専用室にしなければならず、カラオケや飲食は認められないので、注意しましょう。紙巻きたばこの喫煙者に対応するには、喫煙専用室を別途設ける必要があります。
ホテルは屋内禁煙が義務付けられていますが、対象となるのはロビーや宴会場、会議室などであり、客室は対象外となっています。とはいえ、客室内の喫煙が完全に自由とは限らず、一般的には、喫煙が可能な部屋と、禁煙の部屋とで分けられていることが多いようです。
なお、自宅での喫煙も喫煙室などの基準は設けられていません。ただし、当然ながら望まない受動喫煙や近隣への配慮は必要です。
喫煙室の設置基準
店舗・施設に合った適切なサイズ、仕組みの喫煙室を設置するためには、排気風量、喫煙室面積、定員などを踏まえながら、改正健康増進法における技術的基準を満たす必要があります。
クリアしなければならない技術的基準は以下の3つです。
・出入り口において室外から室内へ空気が「0.2m/秒以上」の風速で流入しているか
・たばこの煙が室内から室外へと漏れ出ないよう、壁や天井によって区画されているか
・たばこの煙が屋外に排気されているか
必要に応じてダクトや換気扇などの工事も行ないつつ、上記の基準を満たすようにしましょう。
◇喫煙室を屋外排気にするための課題
改正健康増進法における技術的基準のうち、特に注意すべきものが「屋外排気」です。
たばこの煙を喫煙室内から屋外へと排気するためには、専用の排気設備が必要で、先述のダクトや換気扇がそれに該当します。新たに屋外排気設備を設置する場合、大がかりなダクト工事や電気工事を実施しなければならないケースが多く、かなりの時間と費用を要します。
また、自社ビルではなくテナントとして建物を利用している場合、ビルのオーナーから工事の許可が下りないかもしれません。それ以前にビルの構造上、工事を実施できないケースもあります。
さらに、喫煙室を屋外排気にできたとしても、たばこの煙や臭いが原因で近隣から苦情が出ることも考えられます。大きなトラブルに発展すると、企業や店舗の信用にも悪影響を与えかねません。そのため、屋外排気設備を設置するなら、単に煙を排出するだけではなく、有害成分や臭いをできるだけ取り除いてから排出する必要があります。
なお、費用や建物構造などの問題から屋外排気が難しい場合、経過措置として「脱煙機能付き喫煙ブース」の設置で代替することが可能です。以下の3つの条件を満たせば、この経過措置を適用できるようになります。
・総揮発性有機化合物(TVOC)の除去率が95%以上
・当該設備で浄化されて室外に排気される空気の浮遊粉じんの量が0.015mg/㎥以下
・当該設備の室内に向かう気流が、開口面のすべての測定点で0.2m/秒以上
特にクリーンエア・スカンジナビアの「喫煙ブース」は、屋内のどこにでも設置できるうえ、非常に優れた浄化能力を発揮するので、ぜひご検討ください。
クリーンエア・スカンジナビアの導入事例についてはこちら。
喫煙室を設置するときの注意点
快適な空気を保つためには、喫煙室が満たすべき技術的基準を踏まえながら、適切な対策を講じることが大切です。そこで、喫煙室を設置するときの注意点や、必要な数値の算出方法について解説します。
◇排気装置を選ぶ
喫煙室を設置するにあたって、排気装置の選定はとても重要なポイントです。店舗・施設の広さや喫煙室の設置場所、排気効率などを考慮しながら、きちんと排気できるだけの風量を確保する必要があります。
喫煙室で使われる排気装置は、ラインファン、遠心ファン、換気扇、天井扇などが一般的ですが、環境によって選ぶべき製品や台数は異なります。
ただし、排気風量に余裕を持たせたほうが排気効率は安定しやすいといわれているため、その点は注意しておきましょう。
◇排気風量の算出方法を押さえる
屋内の分煙で大切なことは「排気システムをきちんと設けることで、適正に換気を行なえること」です。それを踏まえて、喫煙室の排気風量を算出・決定しましょう。
・開口部の境界風速0.2m/秒以上を満たす排気風量の算出方法
排気風量(㎥/時)=開口部面積(㎡)×境界風速0.2(m/秒)×3,600(秒/時)
・浮遊粉じん濃度0.015mg/㎥以下を満たす排気風量の算出方法
排気風量(㎥/時)=たばこ1本分の浮遊粉じん量10(mg)×1時間当たりのたばこの本数÷時間平均浮遊粉じん濃度0.015(mg/㎥)
◇喫煙室の出入り口の風速の測定方法を押さえる
風速を測定するときは、必ず喫煙室のドアを開けた状態で実施してください。「ガラリ」というスリット状の換気口が付いたドアも多いですが、ガラリ周辺を測定しても正しい結果は得られません。
室外から室内に風速0.2m/秒以上の空気が流れていれば、技術的基準を満たせます。
◇喫煙室の出入り口を工夫する
喫煙室の排気風量が低かったり、風速測定の結果が基準を満たしていなかったりする場合にも、喫煙室の出入り口を工夫すれば改善できる可能性があります。
例えば、ドアを開閉するときに煙が漏れるようなら、スライド式のドアに交換するのがおすすめです。蝶番付きのドアと違って空気の流れに影響しづらいため、煙が室外に漏れにくくなるでしょう。
予算的にドアの交換が難しい場合には、のれんやスクリーンを設置するのも有効です。
◇内循環式喫煙ブースの活用もできる
喫煙室を設けたくてもスペースがない、コストがかかる、工事自体が難しいなどの理由でなかなか設置できない場合もあるでしょう。
こういった場合は、室内循環式喫煙ブースがおすすめです。室内循環式喫煙ブースは、たばこの煙を屋外へ排気しないものの、先にご紹介した機能の3つの基準を満たしたものであれば法律で使用が認められています。
喫煙ブースであれば、喫煙専用の部屋を用意したり、配管工事を行なったりする必要がありません。広いスペースも必要ないため、新たに喫煙室を設けるよりも手軽に設置できます。また、屋外排気とは異なり近隣トラブルが起こりにくいので、設置後も安心して使用できます。
限られた空間を有効活用し、コストを抑えて喫煙スペースを設けたい場合や、同時に喫煙する人数が比較的少ない場合におすすめです。
クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースはたばこの煙や臭いを完全に除去し、ガス状成分もほぼ100%除去できるため、屋内の喫煙ブースとして使用できます。また、きれいになった空気を屋外に排出することも可能です。
喫煙室を設置するなら助成金の活用も
喫煙室を設置するにあたって事業者は、申請により自治体や公社などから助成金を得られる場合があります。制度によって要件や上限金額が異なるため、あらかじめチェックしておきましょう。
◇大阪府受動喫煙防止対策補助制度
大阪府では令和5年度より全面禁煙化にかかる補助金の上限を20万円から100万円となっています。助成対象となる事業者は、以下の全ての項目に該当する必要があります。
補助対象となる事業者の要件
1.大阪府内で令和2年4月1日以前から継続して営業している飲食店である
2.個人経営または中小企業経営(資本金等5,000万円以下)である
3.補助対象とする飲食店の客席面積が100平米以下である
ただし、従業員を雇用しない客席面積が30平米以下の飲食店は除く
※国助成金の対象となるものは、府補助制度を申請する前に国助成制度の交付決定を受ける必要があります。
これ以外にもさまざまな条件があるため、募集要項をよく読んで申請するようにしましょう。
参考:大阪府/大阪府受動喫煙防止対策補助制度
◇生衛業受動喫煙防止対策事業助成金
「生衛業受動喫煙防止対策事業助成金」は、公益財団法人の全国生活衛生営業指導センターが提供する助成金です。助成対象は、労災保険の適用対象外(従業員を雇用していない場合)の「個人事業主」であり、なおかつ「既存特定飲食提供施設」に該当する場合です。喫煙室の設置および改修にかかる費用の一部が助成されます。
助成率は3分の2、上限は100万円です。1事業場あたり1回のみ交付可能で、過去に助成金を受け取っている場合は申請できません。
クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースで快適なオフィス環境に
喫煙室の設置を検討しているのであれば、クリーンエア・スカンジナビアの多様な製品ソリューションをご活用いただくことをおすすめします。
クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースは、「総揮発性有機化合物の除去率が95%以上であること」「当該設備によって浄化され、室外に排気される空気における浮遊粉じんの量が0.015mg/㎥以下であること」などの基準を満たしており、喫煙時の不快感を取り除きます。さらに、法律要件をクリアしていることを証明する計測、およびレポート作成の代行に対応している点も見逃せません。
そして、設置が簡単にできる点も特徴で、100V電源を確保できる場所であれば、屋内のどこにでも設置可能です。大規模な工事をすることなく、限られた空間を有効活用できます。
まとめ
望まない受動喫煙を防ぐための法改正によって、新たな喫煙ルールが定められました。喫煙者も非喫煙者もお互いに心地良く過ごすためには、喫煙スペースからたばこの煙や臭いを漏らさないことや、喫煙スペース内の空気環境を良好に保つことが大切です。
喫煙室には、喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室・喫煙目的室・喫煙可能室の4タイプがあり、それぞれ用途が異なります。喫煙室の設置基準は細かく定められており、それに対応した設備を備えることが必要です。
これから施設やお店の分煙対策を考えている方は、今回ご紹介した内容や算出方法を参考に検討してみてください。助成金制度も用意されているため、対象になる場合は上手に活用しましょう。
今ある空間を活用し、工事不要で喫煙スペースを設置したい場合は、高い空気浄化能力を持つクリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースをぜひご検討ください。
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