【2020年最新版】改正健康増進法を解説!2020年4月全面施行の詳細と飲食店の基準

【2020年最新版】改正健康増進法を解説!2020年4月全面施行の詳細と飲食店の基準

改正健康増進法の全面施行が2020年4月1日に迫り、店舗・施設を経営する方々も喫煙室の設置や標識の掲示を済ませているかと思われます。しかし、喫煙室の設置や標識の掲示さえされていればよいというのではなく、喫煙室が所定の基準を満たし継続的に使用されていることも必要になります。
この記事では、2020年4月に全面施行される改正健康増進法の概要を振り返りながら、飲食店に設けられている基準なども今一度おさらいします。全面施行まで最終段階となり、皆さんが正しい措置を採れていることを再確認するためにお役立てください。

【2020年最新版】改正健康増進法の改正点について

●健康増進法の改正の概要
望まない受動喫煙を減らすため、受動喫煙対策を努力義務とした「健康増進法」が2002年に制定されました。この健康増進法によって、さまざまな店舗や施設で受動喫煙対策が実施されましたが、依然として受動喫煙の機会が完全に少なくなったと言い切れない状況が続いていました。そこで、健康増進法を2018年に改正し、さらに望まない受動喫煙を減らす取り組みが推進されることとなったのです。

2018年の改正健康増進法の、大きな改正ポイントは以下の3つとなります。

① 多くの施設において、屋内が原則、禁煙に
多くの人が集まるさまざまな店舗・施設内において、「屋内」における喫煙が原則として禁止されることになりました。喫煙が認められてない場所で喫煙すると、その個人に最大30万円の罰金が科せられることもある罰則規定が設けられています。
医療機関や教育機関、児童福祉施設、行政機関、航空機の機内、バスの車内では完全禁煙となります。これらの施設・交通機関内には喫煙室の設置も認められていません。ただし施設構内の屋外には、受動喫煙防止のための必要措置が採られていれば喫煙スペースを設置することができます。

② 20歳未満の人は、喫煙エリアへの立ち入りが禁止
喫煙が認められていない20歳未満の人は、喫煙目的ではない場合であっても喫煙可能なエリアに立ち入ることが禁止されます。喫煙可能エリアが設置されている店舗・施設の従業員も、20歳未満であればその場所への立ち入りは禁止とされます。

③ 喫煙室がある場合には標識を掲示
施設内に喫煙室が設置されている場合、施設の出入口および喫煙室の出入口に、施設の種類に応じて所定の様式の標識を掲示することが義務付けられました。喫煙可能な店舗や施設を探す際に、それらの標識の掲示を確認することによって喫煙可能な店舗・施設を見つけやすくなります。

【屋内に喫煙可能な場所(喫煙室)を設置する場合の基準】
店舗・施設の屋内に喫煙が可能な場所を設置する際には、以下の技術的な基準を満たすことが必要となっています。

1.喫煙室の出入口において、室外→室内に流入する空気の気流が0.2m/秒以上であること
2.たばこの煙が室内→室外に漏れることがないよう、壁や天井などで仕切りが設けられ区画されていること
3.たばこの煙が屋外または施設の外部へ向かって排気される措置が採られていること

改正健康増進法については、以下の記事でも詳細をご説明しています。
https://www.qleanair.jp/guide/law/1191/

また、屋内の喫煙場所として「脱煙機能付き喫煙ブース」を設置した場合には、以下のとおり性能確認試験を実施することが必要です。

●性能確認試験の概要
3か月に1度のメンテナンスを実施のうえ、喫煙室として求められる条件を満たしているかの継続的な調査が必要となっています。

① 測定頻度について
・新たに脱煙機能付き喫煙ブースを新規に設置した際には、必ずすぐに測定を実施すること
・脱煙機能付き喫煙ブースの変更(新しいものへの入れ替え)を行った場合も、必ずすぐに測定を実施すること
・基準に適合しない状態のまま脱煙装置を稼動しないようにするため、定期的に測定を実施すること
(以下の図を参照 ※図の引用:厚生労働省ホームページ:「脱煙機能付き喫煙ブースの性能を確認するための測定方法の例」より
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000525314.pdf)



※基本的には、3か月以内ごとに1回以上の間隔で測定を実施すること
※基準値付近となった際には、測定する間隔を1か月以内に1回以上とし、基準を満たしている状態であることを確認のうえでフィルター交換を実施すること
※フィルターを交換した際には、必ず性能を確認するための測定を実施すること


② 測定機器について
【喫煙専用室等に向かう気流を測定する機器】
・基本的にはJIS T 8202に準拠している一般用風速計を用いる。風速計はプローブに指向性があるため、測定する際にはプローブの向きに気を付けて実施すること

【TVOC(総揮発性有機化合物)濃度を測定する機器】
・分解能1ppb以上である、携行型揮発性有機化合物モニターを用いること

【浮遊粉じん濃度を測定する機器】
・公的機関により較正された「相対濃度計(デジタル粉じん計)」を使用する。相対濃度計を用いた場合は、通達「労働安全衛生法の一部を改正する法律に基づく職場の受動喫煙対策について(平成27年5月15日付 基安発0515第1号)」の、別紙2表1で示す質量濃度変換係数で濃度に換算すること。なお通達は最新のものを確認し、表中にない型の機器を使用する場合は個別に問合せが必要

③ 記録について
・測定結果は所定の記録用紙にしたがって記録を行い、記録した結果は3年間保存しておくことが望ましい

【2020年最新版】2020年4月に全面施行「喫煙室設置基準」

改正健康増進法は段階的に施行が始まっていますが、2019年から2020年にかけては施設に関する禁煙措置や喫煙室の設置基準に関する施行が続々と開始されています。

●2019年7月1日から施行の分
改正健康増進法が一部施行され、この日から学校・病院・児童福祉施設など・行政機関の庁舎などにおいて、原則敷地内が禁煙となりました。
ただし、これらの施設の屋外で受動喫煙を防止する必要な措置がとられている場所に喫煙所を設置した際には、その中でのみ喫煙が可能となります。

●2020年4月1日から施行の分
さらに2020年4月1日には全面施行される予定となっており、学校・病院・児童福祉施設など・行政機関の庁舎など以外でも、多数の人が利用する施設すべてについて、原則として屋内での喫煙ができなくなります。これらの施設には飲食店やオフィス、事業所、交通機関なども含まれます。
ただし、施設の屋内であっても喫煙ブースなど喫煙専用室を設置したり、指定たばこ(加熱式たばこ)専用喫煙室を設置したりした際には、その室内でのみ喫煙することが可能となります。

●喫煙室の基準と標識と特定屋外喫煙場所について施設の屋内に喫煙室を設置した場合や、施設の屋外に特定屋外喫煙場所を設置した場合、以下のとおり定められた基準を満たすことが必要となります。

・喫煙室の基準
屋内に、喫煙可能な場所を設ける際には法律で定められた以下の技術的な基準があり、これらを満たさなければなりません。

①喫煙室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m毎秒以上であること
②たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること
③たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されていること
喫煙室の設置に際しての技術的な基準については、以下の記事でもくわしくご紹介しています。
https://www.qleanair.jp/guide/law/46/
https://www.qleanair.jp/guide/law/1183/

・標識
施設内に喫煙室を設置している場合、施設の出入口と喫煙室の出入口に喫煙室の性質に合った標識を掲示しなければなりません。

【喫煙専用室設置の施設】
喫煙室では喫煙のみが可能となり、喫煙室内では飲食不可となります。「喫煙専用室あり」の標識を施設出入口に掲示し、喫煙室出入口に「喫煙専用室」の標識を掲示します。

【加熱式たばこ専用喫煙室設置の施設】
加熱式たばこ専用喫煙室では加熱式たばこのみが喫煙可となり、室内での飲食も可能となります。施設出入口に「加熱式たばこ専用喫煙室あり」の標識を掲示し、加熱式たばこ専用喫煙室の出入口に「加熱式たばこ専用喫煙室」の標識を掲示します。

【喫煙可能室設置の施設】
経営規模が小さい飲食店では、経過措置として喫煙および飲食が可能な喫煙可能室を設置することが認められています。喫煙可能室を設置している施設では、施設の出入口に「喫煙可能室あり」の標識を掲示し、喫煙可能室の出入口に「喫煙可能室」の標識を掲示します。

【喫煙目的室設置の施設および喫煙可能店・喫煙目的店】
たばこ販売店や公衆喫煙所、シガーバーなど喫煙がサービスの目的となっている施設では、受動喫煙防止の構造設備基準に適合している室内の空間に限って、喫煙目的室の設置が可能となっています。喫煙目的室の室内では喫煙および飲食を始めとするサービスなどの提供が可能です。喫煙目的室の設置された施設の出入口には「喫煙目的室あり」の標識を掲示し、喫煙目的室の出入口には「喫煙目的室」の標識を掲示します。また、店内が全面的に喫煙可能な施設の場合は、施設出入口に「喫煙可能店」の標識を掲示します。店そのものが喫煙を目的とする施設の場合は、施設出入口に「喫煙目的店」の標識を掲示します。

喫煙室に関する標識の詳細は、以下の記事でもくわしくご紹介しています。
https://www.qleanair.jp/guide/law/1189/
https://www.qleanair.jp/guide/law/1185/

・特定屋外喫煙場所
施設内が全面禁煙とされている学校、病院、児童福祉施設など、行政機関に関しては、受動喫煙を防止するために必要な措置が採られた場所であれば屋外に「特定屋外喫煙場所」の設置が可能とされています。

【特定屋外喫煙場所の設置にともなって必要な措置】
・喫煙できる場所と喫煙できない場所が区画されていること
・その場所が特定屋外喫煙場所であることがわかる標識を必ず掲示すること
・施設を利用する多くの人が、通常は立ち入る機会のない場所に設置すること。たとえば「建物の出入口の前」を避け、「建物の裏」や「建物の屋上」などへの設置が望ましい

【特定屋外喫煙場所に関する技術的留意事項の案】基本的には、煙が周囲に容易に漏れ出ないようにすることが望ましい

具体的な例
① 壁と天井で囲まれており、屋外排気設備のあるコンテナ状の建物の場合
・煙を排出する排気口は天井に近い高い位置に設置し、人通りの少ない場所に向ける
・空気を入れる給気口(出入口との兼用可)は、排気口の逆の側に設置する

② 壁で囲まれており、天井が開放されているパーティション型の区画のみの場合
・壁は高さ3メートル程度とする
・出入口は、2回以上方向転換を必要とするクランク構造であること
・四方にある壁の下部には給気するための、10cm~20cmぐらいの隙間を空ける
・天井の一部を囲う際は、天井に勾配を付けて壁と天井の間には人通りの少ない場所に向けた開口面を排気目的で設ける。周辺の地面よりも高い位置への設置が望ましい
特定屋外喫煙場所については、以下の記事でもくわしくご紹介しています。
https://www.qleanair.jp/guide/law/1187/
https://www.qleanair.jp/guide/law/1181/

【2020年最新】飲食店の基準

飲食店において、設けられている改正健康増進法に基づく喫煙室に関する基準は、以下のとおりです。

●設置可能な喫煙室
・喫煙専用室
喫煙のみを目的とした喫煙室で、室内での飲食は付加

・加熱式たばこ専用喫煙室
加熱式たばこに限って喫煙可能な喫煙室で、室内での飲食が可能

●想定される喫煙室設置のパターンは?
・喫煙専用室を設置する
飲食スペースとは別に、喫煙のみが可能な喫煙専用室を施設内に設置するパターン

・加熱式たばこ専用喫煙室を設置する
禁煙の飲食スペースとは別に、喫煙しながらの飲食が可能な加熱式たばこ専用喫煙室を設置するパターン

・喫煙専用室と加熱式たばこ専用喫煙室を設置する
喫煙のみを目的とした喫煙専用室と、加熱式たばこの喫煙と飲食が可能な加熱式たばこ専用喫煙室を同時に設置するパターン

●喫煙室の設置の期限
改正健康増進法が全面施行される2020年4月までに、上記の喫煙室の設置が必要となります。

●財政・税制支援
喫煙室の設置には、以下の財政支援および税制支援が行われています。
【財政支援】受動喫煙防止対策助成金
【税制処置】特別償却または税額控除制度

●義務違反時の指導・命令・罰則の適用について
喫煙室以外のスペースで喫煙した場合や、喫煙室が所定の基準を満たさないまま運用した場合は違反として指導・命令・罰則が科せられることがあります。

・施設管理者の違反の場合は最大50万円の罰金
・各種喫煙室が基準を満たしていない場合は、その管理者に最大50万円の罰金
・喫煙室以外の場所で喫煙した人には最大30万円の過料

●飲食店の分煙や禁煙に関する取り組み
改正健康増進法の全面施行に備え、各大手飲食店チェーンでも禁煙・分煙に関する取り組みが実施されています。ファミリーレストランをはじめ、カフェやファストフードの各店舗における全面禁煙化などに対する取り組みの概要は、以下の記事でご参照いただけます。
https://www.qleanair.jp/guide/separate/1138/
https://www.qleanair.jp/guide/separate/1134/

まとめ

この記事では、2018年に制定された改正健康増進法の全面施行が2020年4月に迫っていることにともない、改正健康増進法の内容と施行過程を今一度まとめて再確認いたしました。
全面施行後はこれまでなかった罰則規定なども設けられるため、個人の方のみならず店舗・施設を運営・管理する皆さんも違反がないよう留意しながらの営業が必要となります。店内に喫煙室や喫煙ブースを設置している経営者の方は、所定の基準を満たして運用できるようメンテナンスや機器による測定も怠りなく実施するようにしましょう。