受動喫煙防止条例の基本をおさえよう

受動喫煙防止条例の基本をおさえよう

受動喫煙防止条例をご存知でしょうか。東京都が東京オリンピック・パラリンピック(以下「東京五輪」と称する)に向けこの条例を可決したことで関心を持った方も多いと思います。すでに神奈川県などでは施行されているこの条例は、国の健康増進法の改正と共に全国へ広がっていくことになるでしょう。そこで今回は受動喫煙防止条例について、対象となる施設や、違反した場合の罰則などについて紹介していきます。

受動喫煙防止条例とは

受動喫煙防止条例とは公共的空間、施設において望まない受動喫煙の防止を目的として定められた罰則を含む条例のことです。全国に先がけて、2010年に神奈川県において「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」が施行されました。また、東京都では2020年の東京五輪に向けて受動喫煙防止条例が成立、2020年4月に全面施行を予定しています。
受動喫煙防止について、国の改正健康増進法では施設ごとに受動喫煙防止に必要な措置を定めています。学校、病院、行政機関などは敷地内禁煙、飲食店、事務所、ホテル※1などは屋内禁煙といったように施設の区分によって必要な措置が細かく規定されているのが特徴です。
※1 旅館・ホテルの客室等、人の居住の用に供する場所は適用外

受動喫煙の背景

日本における受動喫煙による年間死亡者数は推定1万5千人※2とも言われており、受動喫煙によって肺がんや脳卒中、乳幼児突然死症候群のリスクが高まることが指摘されています。特に子どもへの影響については、呼吸器疾患や肺の成長・発達の阻害などが報告されています。
また、受動喫煙による健康被害については、2007年にWHOから「受動喫煙防止のための政策勧告」が提言されました。WHOは提言の中で「屋内においては換気ではなく完全禁煙が必要である」として、受動喫煙防止対策の重要性について述べ、これを受けて世界的に受動喫煙防止対策が進められています。
※2 平成27年度報告書(厚生労働省)

具体的な条例内容を紹介

では、条例がどのように適用されるかみてみましょう。

・飲食店、事務所、ホテルなど
飲食店、その他多数の者が利用する施設は原則屋内禁煙とされます。ただし、既存の飲食店で個人または資本金5,000万円以下の中小企業が経営する客席面積100平方メートル以下の飲食店は規制の対象外となります。
・病院、学校など
病院、幼稚園、保育所、小・中・高等学校、大学、行政機関は敷地内禁煙です。ただし、敷地内の屋外において、受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所に喫煙所を設置することは可能です。
・バス・タクシー・航空機
バス・タクシー・航空機内はすべて禁煙です。
・罰則
禁煙場所に灰皿を置くなど喫煙防止のための必要な措置が講じられていない場合、施設管理者に50万円以下の過料が科せられます。また、禁煙場所において喫煙した個人には30万円以下の過料が科せられます。

受動喫煙防止条例のスケジュール

条例施行は段階的に実施されます。例えば東京都の場合、以下のように実施される見通しです。

2018年:国と東京都が受動喫煙防止に必要な措置を推進。該当施設は必要に応じて喫煙室の工事等の準備。受動喫煙防止の事実周知をおこなう。
2019年:学校や病院、児童福祉施設等、行政機関で施行開始。
2020年:飲食店、事務所、ホテル、その他多数の者が利用する施設などを含めた全面施行開始。

各都道府県の受動喫煙防止条例

各都道府県の条例について、いくつか具体例をみてみましょう。

・東京都
小規模な飲食店での規定が、国の規定とは異なる形で定められています。国の規定では、既存の飲食店で個人または資本金5,000万円以下の中小企業が経営する客席面積100平方メートル以下の飲食店は規制の対象外となります。これに対し、東京都の受動喫煙防止条例は従業員がいる飲食店の場合は原則禁煙となっています。
・神奈川県
全国で最も早く、2010年に受動喫煙防止条例を施行しました。国の改正健康増進法による罰則規定では施設管理者の義務違反は50万円以下、個人の禁煙場所での喫煙は30万円以下の過料が科せられますが、神奈川県の罰則では施設管理者の義務違反は5万円以下、個人の禁煙場所での喫煙は2万円以下の過料と定められています。
・兵庫県
国の規定では病院、児童福祉施設は敷地内禁煙となっています。しかし、兵庫県の受動喫煙防止条例では敷地内すべてが禁煙というわけではなく、病院、児童福祉施設などは屋内のみ禁煙とされており、屋外についての規定は設けられていません。

条例の詳細はこちら

さらに詳しい条例の内容については、こちらをご確認ください。

厚生労働省 受動喫煙対策