企業が行なうべき熱中症対策とは?対策するメリットや正しい方法を解説

近年、夏の猛暑は厳しさを増し、職場での熱中症による健康被害が深刻化してきました。
従業員の安全確保はもちろん、2025年6月からは熱中症対策の一部が義務化されるなど、企業にとって対策の重要性が増しています。
しかし、具体的な対策や法改正への対応など、何をすれば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、職場における熱中症の発生状況や法改正のポイントを踏まえつつ、企業が熱中症対策を行なうメリットや具体的な対策方法を解説します。
あわせて、熱中症対策を進めるうえで気を付けるべき「密閉空間での機械へのホコリ蓄積」、「製品へのコンタミ(異物混入)リスク」、「作業員の健康を重視した快適な環境づくり」などの課題へのアプローチの一つとして、空気清浄機の活用事例もご紹介します。ぜひご一読ください。
職場での熱中症死傷者数
厚生労働省の調査によると、2023年(令和5年)の職場における熱中症による死傷者数は1,106人にのぼり、前年の827人から279人増加しました。これは、前年比で約34%の増加となっています。
業種別に見ると、熱中症による死傷者は全体の約4割が建設業と製造業で発生しており、亡くなった31人のうち、建設業が12人、警備業が6人を占めています。
職場での熱中症は発生件数が増加傾向にあるだけでなく、重篤化して死亡に至るケースもあとを絶ちません。
特に労働者が高温多湿な環境で業務に従事する場合は、熱中症のリスクが一層高まります。そのため事業者や管理者は、適切な作業環境の整備と管理体制の構築が求められています。
出典:厚生労働省 令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
2025年6月施行予定!企業の熱中症対策が義務化へ
職場で発生する熱中症は、ほかの災害に比べて死亡に至る割合が5~6倍と高い傾向にあります。その多くは、初期症状の見逃しや適切な対応の遅れが原因とされています。
こうした状況を受け、働く人を熱中症から守るため、2025年6月1日より企業に対して罰則付きでの熱中症対策義務化が予定されています。
義務化の対象となるのは、「WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間以上の実施」が見込まれる作業です。
「暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)」とは、気温だけでなく、湿度や日射・輻射(ふくしゃ)熱(地面や建物からの照り返しなど)、風(気流)の影響を考慮した指標で、環境省の「熱中症予防サイト」で確認できます。
事業者に義務付けられる具体的な内容は、以下の3点です。
1. 報告体制の整備
熱中症の自覚症状がある労働者や熱中症のおそれがある労働者に気付いた人が、速やかに報告できる体制(連絡先や担当者など)を定め、周知すること。職場巡視やウェアラブルデバイスの活用なども推奨されています。
2. 実施手順の作成
熱中症のおそれがある場合に、迅速かつ的確な判断ができるよう、労働者を作業から離脱させる、体を冷やす、医療機関へ搬送するといった必要な措置の手順をあらかじめ作成すること。緊急連絡網や緊急搬送先の情報の整備なども含みます。
3. 関係労働者への周知
上記1、2で定めた体制や手順について、関係する従業員(労働者だけでなく、同じ作業場で働く熱中症のおそれのある作業に従事する人も含む)にしっかりと周知すること。
上記の対策を怠った場合、事業者は「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。そのため、社内体制の整備や対応マニュアルの作成・見直し、従業員への教育などを早めに進めておくことが重要です。
出典:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
企業が熱中症対策を行なうメリット
熱中症対策に取り組むことは、単に法的義務を果たすだけでなく、企業価値の向上にも大きく貢献します。
具体的に得られるメリットを、以下で解説します。
◇従業員の健康と安全を守れる
熱中症は、立ちくらみや頭痛、吐き気などのさまざまな症状が見られ、重症化するとけいれんや意識障害を引き起こし、最悪の場合、命にかかわるおそれがあります。
また、暑さによる集中力や判断力の低下は、機械の操作ミスや高所からの転落などの思わぬ事故につながる可能性も否定できません。
企業が積極的に対策を行なうことで、こうした熱中症による健康被害や事故のリスクを減らし、従業員が健康に働ける安全な職場を維持できます。
◇生産性が向上する
快適で安全な労働環境は、従業員のモチベーションや集中力を高め、職場全体の生産性アップにつながります。従業員が心身ともに健康で、安心して働ける環境を整えることで、結果的に企業の業績向上にも貢献できるでしょう。
◇企業イメージの向上
適切な熱中症対策を実施することで、従業員の安全を最優先に考える企業姿勢が伝わり、「従業員を大切にする会社」として信頼感が高まります。従業員の満足度向上にもつながり、結果的に離職率の低下にも寄与する可能性があります。
また、健康管理や安全配慮への取り組みは対外的にも高く評価され、取引先や顧客、求職者からの企業イメージ向上にもつながるでしょう。
◇法的リスクの軽減につながる
従業員が熱中症になるリスクを未然に防いでおけば、先に触れたような思わぬ事故を防げます。労働法令では、企業に以下のような熱中症予防対策を行なうことを義務付けています。
● 暑熱又は多湿の屋内作業(労働安全衛生規則第587条第1項で定める作業場)では、半月ごとの作業環境の気温・湿度・輻射熱の測定を行う(安衛則587条)
● 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房設備の設置、または通風の確保を行う(安衛則606条)
● 多量の発汗を伴う作業場では、塩分および飲料水の準備を行う(安衛則617条)
● 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務従事者に対して、半年ごとの特定業務従事者健康診断の実施を行う(安衛則45条)
対策を怠り、従業員が熱中症を発症した場合、義務違反を問われて民事訴訟に発展する可能性もあります。法令を遵守し、適切な熱中症対策を講じることで、こうした法的リスクを軽減できます。
出典:職場における熱中症予防対策
企業が行なうべき熱中症対策
企業が熱中症対策を行なうことは、従業員の健康と安全を守り、業務効率を維持するためにも不可欠です。また、企業の社会的責任や法令遵守の観点からも極めて重要になっています。
厚生労働省では、職場における熱中症予防のための具体的な対策を示しています。おもな対策は、以下が挙げられます。
【作業環境管理】
• 簡易的な屋根の設置、通風、冷房の設置などで暑さ指数(WBGT値)を低減
• 高温多湿作業場の近くに、日陰となる、もしくは冷房を備えた休憩場所を確保
• 高温多湿作業場の近くに体を冷やすための物品や設備などを準備
• 水分や塩分の補給のため、高温多湿作業場に飲料水の備え付けを準備
【作業管理】
• WBGT値に応じた作業時間の短縮や適切な休憩時間の確保
• 体を徐々に暑さに慣らす「暑熱順化期間」の設定
• 定期的な水分・塩分の摂取の徹底
• 通気性の良い服装や、場合によっては帽子・ヘルメットなどを着用
• 作業中の労働者に対する健康状態の確認
【健康管理】
• 持病への対応や日常の健康管理などで、熱中症リスクの高い従業員への配慮
• 熱中症の症状や予防法、応急処置に関する知識など、労働衛生教育の実施
これらの対策を総合的に実施し、職場での熱中症予防に努めましょう。
出典:厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」
◇エアコンと空気清浄機を併用する
職場での熱中症対策には、エアコンと空気清浄機を併用することが効果的です。
とくに気温や湿度が高まる季節には、室温を28度以下に保つことが推奨されており、空調管理が欠かせません。
工場や倉庫のような現場では室内の換気も重要ですが、窓を開けて換気を行うと屋外の熱気が入り込むため、エアコンの冷房効率の低下は避けられません。一方で、冷房効率を優先して換気が不十分になると空気が滞留し、作業員の集中力や体調に影響を及ぼす恐れがあります。
また、熱中症対策として空間を密閉することで、これまで自然換気で排出されていた粉じんや揮発性有機化合物(VOC)などの汚染物質が室内に滞留しやすくなります。その結果、製品への異物混入や設備への堆積、さらには作業空間そのものの環境悪化など、新たな課題が発生する可能性があります。
こうした課題に対して有効なのが、工業向けの高性能空気清浄機です。特に高処理風量タイプの機種であれば、広い工場や倉庫内の空気を効率よく循環・清浄でき、粉じんや揮発性有機化合物(VOC)を継続的に除去します。
そのため、作業環境の改善には、エアコンで室温と湿度を調整しながら、空気清浄機で空気中の有害物質を除去する併用方法が非常に効果的です。気流の循環と空気清浄を両立させることで、暑さ対策とともに清潔で安全な作業環境を維持することができます。
暑さ対策と空気環境の整備の両面から作業員の健康と製品の品質を守り、より良い作業環境を維持するためにも、エアコンと空気清浄機の併用をぜひご検討ください。
エアコンと空気清浄機を併用して熱中症対策を行なうならクリーンエア・スカンジナビアのQleanAir FS 70
熱中症対策のため、エアコンによる温度管理と空気清浄機による快適な空気環境の維持を両立させたい場合には、クリーンエア・スカンジナビアの工業用空気清浄機「QleanAir FS 70」がおすすめです。
本製品は、製造業や倉庫、物流施設など、粉じんや有毒ガスが発生しやすい環境向けに設計されており、毎時3,000㎥の高い処理風量で空気を効率的に浄化します。
確かなフィルターシステムで、集塵機では捕集が難しい25μm以下の細かい浮遊粉じんまでしっかり捉えます。設置場所の課題やニーズに合わせ、製品バリエーションの中から最適なフィルターや付属品をお選びください。
QleanAir FS 70を導入することで、エアコンの効率を維持しながら、熱中症対策と安全でクリーンな作業環境を実現できます。
【クリーンエア・スカンジナビアのQleanAir FS 70の導入事例】
◇ヨハン&ニストローム
ストックホルム郊外にあるヨハン&ニストローム社では、コーヒー豆や袋からのホコリが課題となっており、「QleanAir FS 70」を導入しました。
導入後は空気が吸いやすくなり、作業場が清潔に保たれるようになったことで効果を実感。設備の状態も良くなり、清潔が保たれるようになったため、清掃の負担が軽減されたことにも満足しています。
まとめ
職場における熱中症対策は、従業員の健康と安全を守るだけでなく、生産性の維持・向上や企業イメージの向上、さらに法的リスクの回避にも直結する重要な取り組みです。
2025年6月からの義務化を見据え、早めの対策が強く求められます。製品の品質や作業工程を維持し、安全で快適な作業環境を実現していくためにも、基本的な熱中症対策に加えてエアコンと空気清浄機の併用が効果的です。
クリーンエア・スカンジナビアの「QleanAir FS 70」は、高い浄化能力を備え、ニーズに応じた製品バリエーションをご用意しております。熱中症対策とあわせて粉じんなどの空気環境問題も改善したい場合には、ぜひ導入をご検討ください。
■監修者情報
勝木美佐子
株式会社産業医かつき虎ノ門事務所代表、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医、日本内科学会総合内科専門医
・1993年より産業医活動を開始。運送業、清掃業、製造業、地⽅公務員、病院、通信業、遊技業、アパレル業、IT業、ホテル業など多岐にわたる産業の産業医業務に従事。
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