「クリーンルームに求められるクラスとは?導入の課題や空気清浄機の活用方法などを解説」分煙対策(喫煙ブース)・空気清浄ガイド

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2025.6.2 空気環境

クリーンルームに求められるクラスとは?導入の課題や空気清浄機の活用方法などを解説

医薬品や食品など、人の体内に入る製品、また精密機器のように微細な部品を組み合わせた製品は、わずかな塵や細菌によっても品質が大きく損なわれる可能性があります。

こうしたリスクを防ぐため、多くの企業では作業環境に「クリーンルーム」を導入しています。

本記事では、クリーンルームの基礎知識を押さえながら、求められるクラス(清浄度)の概要、導入によるメリットや課題について解説します。

さらに、清浄度を維持するための空気清浄機の活用法や、清浄度向上に役立つ製品例についてもご紹介します。クリーンな環境づくりに向けた取り組みを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

クリーンルームとは

クリーンルームとは、空気中の塵・ホコリ・細菌などを徹底的に取り除き、空気の清浄度を確保した部屋のことです。別称で「防塵室」とも呼ばれています。

クリーンルームは主に工場や医療施設で導入されていますが、医療・生命科学・電子工学・食品産業など、分野ごとに求められる仕様は異なります。つまり、業種や作業内容に応じて、クリーンルームの設計や管理方法も変わってくるということです。

なお、日本産業規格(JIS)では、クリーンルームを以下のように定義しています。

空気中における浮遊微小粒子,浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され,また,その空間に供給される材料,薬品,水などについても要求される浄度が保持され,必要に応じて温度,湿度,圧力などの環境条件についても管理が行われている空間 (コンタミネーションコントロール用語 JIS Z8122 4001から一部抜粋)

クリーンルームに求められるクラス(清浄度)



クラス(清浄度)とは、クリーンルーム内の清浄度レベルを等級で分類する指標のことです。より簡単に言えば、空間内に存在する異物の量をもとに、きれいさの度合いを表しています。

クリーンルーム内の清浄度は、国際標準化機構(ISO)が定めるISO規格によって基準が設けられています。1㎥当たりの空気中に含まれる0.1µm以上の粒子数をベースに、粒子のサイズと量によって1~9のクラスへ分類するというものです。

清浄度クラス 次の対象粒径以上の粒子に対する上限粒子数濃度(個/㎥)
0.1µm 0.2µm 0.3µm 0.5µm 1µm 5µm
1 10 2
2 100 24 10 4
3 1,000 237 102 35 8
4 10,000 2,370 1,020 352 83
5 100,000 23,700 10,200 3,520 832 29
6 1,000,000 237,000 102,000 35,200 8,320 293
7 352,000 83,200 2,930
8 3,520,000 832,000 29,300
9 35,200,000 8,320,000 293,000


例えば、1㎥当たりの空気中に10,200個以下の0.3µm粒子が含まれていた場合、清浄度はクラス5です。クラスの数値が小さくなるほど、その空間の清浄度が高いことを示します。

◇業種による清浄度クラス

クリーンルームに求められる清浄度クラスのレベルは、業界によって異なるものの、大まかな目安があります。業種・作業内容・製品の仕様・歩留まりなどに基づき、適切な清浄度クラスが決定されるため、把握しておきましょう。

以下に、業種別のクラスを表形式でまとめました。

産業分野 求められる清浄度クラス 対策
半導体工場(前工程) クラス1~3 ハイレベルな塵埃管理
電子部品工場 クラス4~6 製品の生産性向上と品質管理
光学機械工場 高精度製品への対応と品質管理
精密工場 微細塵埃の除去と製品の品質管理
薬品・食品工場 虫の侵入対策
印刷工場 クラス7~9 製品の仕上がりの向上と品質管理
自動車部品工場 鉄の切粉・鉄のコゲ・くずなど目に見えるもの
手術室、治療室 空気感染を考慮、医師の保護
花粉症対策 スギ花粉の大きさは30~40µm
インフルエンザ 空気乾燥の対策・密閉度が必要
半導体工場(後工程) 搬入前に外の汚染物質を落とす
プリント基板 異物・コンタミの除去
精密機械 埃や塵、ゴミなどから守る梱包
食品包装材 包装材の十分な洗浄や殺菌、清潔な梱包状態の維持


例えば薬品や食品の工場では、製造過程で微生物や異物が混入すると、健康被害など深刻な問題を引き起こす恐れがあります。そのため、一般的にISOクラス5以上の高い清浄度が求められます。

一方、半導体工場では、極小サイズの部品を取り扱う性質上、微細な塵やホコリの付着でも品質が低下してしまいます。そのため、ISOクラス1〜3の最高レベルの清浄度が必要とされます。

◇クリーンルームの4原則

クリーンルームの清浄度を維持するためには、設備や環境を整えるだけではなく、作業者が基本ルール「クリーンルームの4原則」をきちんと遵守して働く必要があります。

4原則の内容は、以下のとおりです。

【原則1:持ち込まない】
● 室内に送り込む空気には除塵・除菌操作を行う
● 他の部屋、廊下、天井裏に対して正圧にする
● 作業者は更衣室、A/R(A/S)を通って入室する
● 原料・包装材料はA/R(A/S)やPBを通していれる

【原則2:発生させない】
● 無塵衣を着用する
● 発塵し易い備品を使わない
● 作業員を少なくする努力をする
● 不用品の持ち込みを禁止する
● 室温を高温・多湿にしない

【原則3:埃を堆積させない】
● 室内の天井、壁、床は平滑なものとする
● 露出ダクト、横引き配管など埃溜まりをつくらない
● 洗浄・清掃を随時行う
● 集塵機の効果的使用を行う
● 清掃しにくい場所を作らない

【原則4:排除する】
● 換気回数を多くする
● 発塵部近くで排気をとる
● 気流分布を良くする
● 消毒滅菌操作を随時行う
出典:公益社団法人日本空気清浄協会

クリーンルームを導入する場合、これらのルールも周知徹底しましょう。

クリーンルームを導入するメリット



クリーンルームを導入すると、以下のようなメリットが発生します。

● 製品の品質向上につながる
クリーンルームで作業すれば、製品の品質や信頼性を確保できます。特に医療・食品・化学・金属加工といった産業分野では、異物混入や微生物汚染によるトラブルを未然に防げるため、製品の品質向上に寄与します。
● 製品の供給が安定する
異物や微生物を除去すれば、製品の不良率が下がるので、結果的に安定した供給体制を構築できます。
● 企業イメージが向上する
クリーンルームで品質向上を実現すれば、製品に対する取引先や消費者の信頼度も高まるので、企業やブランドのイメージ向上につながります。
● 作業者の健康リスクを軽減できる
クリーンルーム内は有害物質や細菌が拡散しにくい環境なので、作業者は安全かつ健康的に働くことができます。

クリーンルームの導入は、製品の品質向上や安定供給を実現するだけでなく、企業イメージの向上や作業者の健康リスク軽減などの幅広いメリットをもたらします。

製造現場や作業環境の信頼性を高めるためにも、クリーンルームの導入は有効な選択肢といえるでしょう。

クリーンルームの導入の課題

クリーンルームの導入には、初期コストや運用コストがかかるなどの課題があります。特に、クリーンルームは常に給排気を行う必要があるため、電気代が高くなりがちです。

また、清浄度が高い環境を維持するには、フィルターの交換頻度も上がり、定期的なメンテナンスコストがかさむ点も注意が必要です。

さらに、クリーンルームの導入・運用には、専門的な知識や技術が求められる場合もあります。状況によっては、外部の専門家にサポートを依頼したり、社内で運用マニュアルを整備したりする対応が必要となるでしょう。

作業場の空気の清浄度を保つには工場用の空気清浄機を活用



クリーンルームには多くのメリットがありますが、導入には高額なコストがかかるうえ、生産工程を一時的に停止し、大規模な工事を伴う必要があるため、企業によっては現実的な選択肢とならない場合もあります。

このようなケースでは業務用空気清浄機の導入が代替手段として有効です。空気清浄機を活用することで、作業環境の空気清浄度を一定の水準に保つことが可能になります。

空気清浄機は、クリーンルームの代替としてだけでなく、クラス7~9程度のクリーンルーム内で空気中の微粒子量をさらに低減させたり、基準値を超えた際に数値を基準内に戻したりなどの目的でも、より多く使用されています。

初期導入コストを抑えやすい点に加えて、電気代やメンテナンス費用などの運用コストも比較的低く、導入のハードルを下げる要因となっています。

近年では、MPPS(Most Penetrating Particle Size:最も捕集しにくい粒子径、約0.1〜0.2µm)に対応可能な、HEPAや風量重視のEPAフィルターを搭載した高性能モデルも登場しています。用途や設置環境に応じて、HEPAとEPAの仕様を比較しながら選定することができます。

さらに、ISO規格に準拠したフィルターを搭載しているかどうかも、機種選定時の重要なチェックポイントです。適切な仕様の空気清浄機を導入すれば、クリーンルームに準じた空気清浄度を実現することも十分に可能です。

作業場の清浄度を高めるならクリーンエア・スカンジナビアのQleanAir FS 70

クリーンエア・スカンジナビアの「QleanAir FS 70」は、室内空気の品質管理が求められる製造業などに向けて開発された空気清浄機です。1台でテニスコート1面分(200㎡)の空気環境を改善できるので、清浄度の確保に優れた性能を発揮します。

例えば天井5mの空間であれば、1時間に3回(20分おき)にエリア内のすべての空気が入れ替わる程度の性能があります。

本製品にはHEPAフィルターを搭載しているタイプもあり、一般的な空気清浄機では捕集が難しい0.1~0.2µmの微粒子もしっかりキャッチできる点が強みです。静音性に優れているので、作業の邪魔になりにくい点も魅力です。

食品工場や金属加工工場での導入実績も豊富なので、ぜひご検討ください。

まとめ

クリーンルームは、空気中の塵や細菌を徹底的に除去できるため、半導体工場や薬品工場、食品工場など、空気の清浄度が重要な現場で広く導入されています。

製品の品質向上だけでなく、企業イメージの向上や作業者の健康リスク軽減などのメリットも期待できる点が魅力です。

ただし、導入や運用には大きなコストがかかる場合もあるため、状況に応じて工場用の空気清浄機を活用する選択肢も検討するとよいでしょう。