「吸う人・吸わない人の共存社会」のために取り組む受動喫煙防止とは?全国飲食業生活衛生同業組合連合会にインタビュー

2022.12.13 分煙

「吸う人・吸わない人の共存社会」のために取り組む受動喫煙防止とは?全国飲食業生活衛生同業組合連合会にインタビュー

2003年に施行された健康増進法により、飲食店も公共の場と位置づけられ、受動喫煙防止対策が努力義務として求められています。吸う人、吸わない人どちらも飲食店を快適に利用できる環境を目指して、全国の飲食店の受動喫煙防止対策を推進する、全国飲食業生活衛生同業組合連合会の専務理事 小城哲郎さんにお話を伺いました。

食文化の新たな価値創造を目指す、全国飲食業生活衛生同業組合連合会

―本日はよろしくお願いします。早速ですが組織の沿革や主な活動内容について教えてください。

小城哲郎さん(以下、小城):当組合は、昭和32年6月に「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律(現、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律)」が施行された際、厚生大臣の認可を受けて設立いたしました。

飲食業界の諸問題を解決するため、組織的な団結と行動力により、税制改正問題等の政治的な運動を展開し、飲食業界及び組合の発展を目的として組合員の営業の振興育成に努めています。

また、飲食店営業についての衛生施設の改善向上、水準の維持、向上をはかり、飲食店を利用する国民の生活の安定に寄与することを目的としています。


―飲食業における受動喫煙の現状、課題について教えてください。

小城:2003年に施行された健康増進法によって、飲食店も公共の場と位置づけられ、受動喫煙防止対策が努力義務として求められるようになりました。

同年6月に施行された改正労働安全衛生法においても、職場として、実情に応じた受動喫煙防止対策が努力義務として求められています。

しかし、諸外国と比較しても日本の喫煙規制が遅れているという認識もあり、2020年東京オリンピックを控えるなかで飲食店においても全面禁煙や喫煙室設置の厳格な基準による、受動喫煙防止対策を求める新たな立法措置についての議論が活発化しました。

当組合としては、飲食店において過度な喫煙規制が課せられることは、さまざまな課題や負担があることを考え、行政に対して「実情にあった受動喫煙防止対策の推進」を訴え、まずは業界として主張できる自主的な取り組みとして、店頭表示ステッカーの貼付を組合加盟店全店にて徹底を目指しました。

2018年の健康増進法の改正により、店頭表示の義務化や、分煙施設の基準値が定められ、現在に至っています。

今後の課題という点では、コロナ禍において経営環境の悪化が深刻化し、2025年の健康増進法の見直しに向けて、規制による飲食店の負担が増えることを懸念しています。

全国の飲食事業者へステッカーや分煙マニュアルの配布



―組合連合会では受動喫煙防止のためにどのような取り組みをされていますか?

小城:個店の実情にあった対策(分煙対策)を図るようガイドラインを作成したり、喫煙環境を表示する店頭表示ステッカーを配布するなど、全組合員への周知活動を行なっています。過去にはセミナーを開催し、飲食店の規模に合わせた受動喫煙防止対策の事例を紹介するなど取り組んできました。

補助金を活用して分煙施設を店内に設置したり、店内は全面禁煙へ移行し屋外に喫煙場所を設置したり、加熱式たばこのみ店内で喫煙可能とするなど、利用者のニーズや飲食店の規模にあわせた取り組みの推進が大切だと考えています。

吸う人も吸わない人も気持ちよく飲食店を利用いただけたらと思います。

喫煙を希望する利用者のニーズに反して、小規模飲食店においては、全面禁煙を選択せざる得ないケースも多々あります。飲食店の規模によってできる対策が限られることも多いため、公財)全国生活衛生営業指導センターでは、生活衛生関係営業(生衛業)の事業主であり、労働者災害補償保険(労災保険)の適用を受けない事業主が、受動喫煙防止のための施設整備(喫煙室の設置等)を行う際に助成金を交付し支援しています。

参考URL https://www.seiei.or.jp/smoking/index.html

吸う人、吸わない人の共存社会を実現するために



―飲食業が受動喫煙防止対策に取り組むメリットを教えてください。
小城:喫煙機会の多いといわれる飲食店営業において、これまで述べてきたような分煙対策を促進することにより、その社会的役割を果たすことができると考えています。

また、吸う人・吸わない人の共存社会を形成することで、より飲食店の収益力向上につながることを期待しています。飲食店における、受動喫煙対策のさまざまな障壁を一つひとつ丁寧に解消していくこと、全国の事例を共有していくことが当組合の担う役割だと考えています。


―最後に、分煙機や空気清浄機の導入を検討する方へのメッセージをお願いします。

小城:アフターコロナに向けた店内の衛生管理体制には、これまで以上の感染症対策が求められる時代だと感じています。分煙対策を促進するなかでも、換気効果だけでは効力に限界があるのではないでしょうか。

全国の組合員の方々に対しても、近年新たに開発されている空気清浄機やウイルス除去機能を備えた高性能機器の導入を促進させることも必要だと考えています。繰り返しになりますが、吸う人も吸わない人も快適に過ごしていただける飲食店が全国に増えることを目指して、今後も受動喫煙防止対策事業に取り組んでいきたいと思います。


―本日は貴重なお話をありがとうございました。