分煙が義務化?…健康増進法改正案の概要と影響について

2018.11.27 分煙

分煙が義務化?…健康増進法改正案の概要と影響について

2018年7月に国会にて可決した、いわゆる「健康増進法改正案」により、公共の施設や多くの人が集まる施設での禁煙および原則禁煙が義務付けられることになりました。WHO(世界保健機関)による指摘や、今後数年以内に複数開催されるスポーツの国際大会に備えることがおもな要因です。
今回は、事実上分煙が義務化されるといわれる「健康増進法改正案」とはどのような法律で、どのような社会的影響が予想されるのかについて、くわしくご紹介します。

分煙の義務化について

「健康増進法改正案」により、分煙が義務化されることには、さまざまな社会背景的要因が挙げられます。

1.WHO(世界保健機関)による指摘
2016年にWHOが「各国別にたばこの影響を調査の上発表した資料」によると、G7各国のうち日本がもっとも受動喫煙対策に関して遅れているとされ、先進国中でも特にたばこの悪影響に対して関心が低いことに対する指摘を受けました。

2.スポーツの国際大会を控えている点
日本は2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)と、近い将来大規模な国際スポーツイベントの開催を複数控えています。世界各国から多くの人が集まることが予想されるため、その時期には受動喫煙対策を強化しておくことの必要性が叫ばれているのです。

3.全国的に喫煙者が減少している点
日本国内で、喫煙している人の割合は年々減少しています。厚生労働省が調査をおこなった結果、平成の30年間で男性の喫煙率は2割以上も減少しており、女性の喫煙率に至っては1割以下という数字が出ています。

これらの社会背景に基づき、日本でももっと受動喫煙に関する対策を! という動きが高まり、あらゆる施設での分煙義務化が施行されるに至ったと考えられます。

健康増進法改正案とは?

ここでは、健康増進法改正案の趣旨をかんたんにご説明します。

・望まない受動喫煙をなくす
屋内で受動喫煙を避けたいと考えている人に対し、望まないのに受動喫煙を強いられる状況を可能な限り作らないことを基本とする。

・受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者などに対する配慮
20歳未満の子どもや患者など、受動喫煙がより悪影響となり得る人々に対し、それらの人々がおもに利用する施設において、より対策を徹底する。

次に、健康増進法改正案のおもな概要をご紹介します。

・国、地方公共団体の責務とは?
望まない受動喫煙が発生し得る状況を作らないよう、受動喫煙の防止措置を総合的・効果的に推進しなければなりません。また国や地方自治体および多くの人が利用する施設の管理者・関係者は、受動喫煙防止措置を総合的・効果的に推進するため、連携しながら協力しなければなりません。

・複数の人が利用する施設の喫煙の禁止について
学校や病院、児童福祉施設、行政機関および旅客運送事業自動車、航空機については敷地内全面禁煙とします。ただし、屋外で受動喫煙を適正に防止できる措置がされた場合に限り、専用の喫煙場所を設置できます。
上記以外で多くの人が集まる施設(飲食店を含む)や旅客運送事業船舶、鉄道については、原則屋内禁煙とします。ただし、屋内であっても分煙がなされた喫煙専用室内に限り喫煙可とします。

シーン別!分煙の義務化による影響と懸念事項

健康増進法改正案により、多くの施設において分煙が義務化されることになります。ここでは、この分煙義務化による影響や、懸念事項についてシーン別にくわしくご紹介します。

・分煙の義務化による影響と懸念事項

1.飲食店の場合
「喫煙者が分煙化により店内で喫煙しにくくなることで、来店客が減少するのでは」と不安に思う方もいるでしょう。しかし、海外での研究結果や国内で分煙化に踏み切ったチェーン飲食店での調査によると、来店客数や売り上げにおいては目立った変化はみられなかったケースも見られます。とはいえ、分煙化を本格的におこなっていない店舗の場合には喫煙室の設置など、改修に関するコストの負担は避けられなくなってしまいます。

2.ホテルの場合
ホテルでは、宿泊室の全面禁煙化は義務付けられません。ただし、東京五輪やラグビーW杯でのインバウンド需要に備え、全室禁煙化を図るホテルも散見されます。また、ロビーや公共スペースでは飲食店と同様に喫煙室設置による完全分煙化をおこなう必要があるため、やはり改装や増設に関するコストの負担は懸案となるでしょう。

3.会社(職場)の場合
企業内の職場における禁煙化・分煙化は、自治体単位で「努力義務」としているケースも多く、現状で全体の2割ほどの企業が勤務時間中の禁煙化を達成しています。また、受動喫煙防止の見地以外においても「喫煙休憩は労働生産性を低下させる」とみなし、禁煙とする職場も増加する傾向にあります。また「社員が健康になることで、社会保障費負担を低減させられる」という考え方も浸透しつつあります。その他、イメージ戦略の面でも禁煙・分煙化は効果的となるため、さらに禁煙・分煙を推し進める企業は増加することが見込まれています。